文/満尾正

新型コロナウイルス感染症など、さまざまな病気に負けないための「免疫力」は、日々の食事や生活習慣の改善によって、大幅に高めることができるそうです。しかし、巷に溢れる健康や免疫力に関する知識は刻一刻とアップデートされ、間違った情報や古びてしまったものも少なくありません。コロナ禍の今、本当に現代人が知っておくべき知識とは何でしょうか。著書『世界最新の医療データが示す最強の食事術 ハーバードの栄養学に学ぶ究極の「健康資産」の作り方』が話題の満尾正医師が解説します。

不足するとDNAレベルで問題が起きる栄養素・ 亜鉛

数百種類に及ぶ酵素の中心

亜鉛は、数百種類にも及ぶ酵素の中心で働いており、それら酵素に関与してさまざまな代謝を行います。タンパク質や乳酸、アルコールの代謝もその一例です。なかでも重要な働きに、体を酸化から守る錆止めの働きや有害金属を体外へ排泄する働きがあります。

亜鉛の働きでまず紹介したいのは、やはり免疫機能の維持です。

2016年に発表されたアメリカの研究論文では、亜鉛が免疫機能を高めることが示されました。

その研究は、65歳以上で血中亜鉛濃度が70以下と低い人たちを2つのグループに分け、3カ月間毎日、一方には30ミリグラムの亜鉛を、もう一方にはプラセボを服用してもらうというものです。

すると、亜鉛を服用したグループでは血中亜鉛濃度が上昇すると同時に、免疫力を司るリンパ球の一種である「T細胞」を増やす効果が見られたのです。

免疫機能改善のほかにも、亜鉛は多岐にわたる働きをします。

たとえば、骨の形成、糖代謝やインスリンの合成・維持、肝臓での重要なタンパク質の合成、皮膚細胞の正常化、味蕾細胞(味を感じ取る細胞)の形態維持、性ホルモンの分泌維持、下垂体機能の維持など、健康を守るためには亜鉛が欠かすことのできない栄養素であることがわかります。

上のグラフ(図15)は、体内の各臓器における、平均的な亜鉛の濃度です(血中濃度ではありません)。

前立腺、精液という男性ならではの部位に多く存在するのがわかるでしょう。亜鉛が不足すると男性機能が弱まるという話を聞いたことがあるかも知れませんが、その通りで、亜鉛は性ホルモンの分泌と維持に欠かせません。

もちろん、女性には無縁というわけではありません。

網膜にも多く、足りないと視力が落ちてしまいます。

脳で不足すれば、認知機能に影響が出ます。

代謝に大きく関わる肝臓、腎臓、膵臓などの部位では、亜鉛の不足はその臓器そのものの機能を落とすことを意味します。

さらに亜鉛は、DNAの転写や修復といった重要な作業にも関わっています。亜鉛は、細胞分裂をするときにジッパーを開けるような作用をするため「ジンク(亜鉛)・フィンガー」とも呼ばれています。

亜鉛が不足すれば、DNAレベルで問題が起きるのです。

欠乏による症状については後述しますが、とにかく亜鉛不足を放置するのは非常にリスキーだということをまずは覚えておいてください。

亜鉛不足がもたらす深刻な不調

では、亜鉛が不足すると私たちの体はどうなってしまうのでしょうか。高血圧、リウマチ性関節症、胃潰瘍、骨粗鬆症、味覚障害など、ありとあらゆる不都合が起きます。

とくに、皮膚ではいろいろ起きますが、それについては後述しましょう。

命に直結するところでは、前立腺がんの発症率が高くなります。実際に、土壌や地下水の亜鉛濃度が低い地域では前立腺がんが多いことがわかっています。

一方で、亜鉛のサプリメントを服用することで、前立腺がんが明らかに減っていることを示す論文も複数出ています。

糖尿病にかかりやすくなることも明らかです。糖代謝やインスリンの合成・貯蔵に関わる亜鉛が不足していれば、血糖値は上昇します。

逆に、亜鉛の補充によって、糖尿病から免れることも可能です。

2018年に、160名(80名は健康で、80名は糖尿病予備軍)の閉経後の女性を対象とした研究が日本で行われました。

糖代謝関連の血液データと、28種の元素について調べたところ、糖尿病予備軍のグループでは亜鉛が有意に低かったそうです。

また、亜鉛とストロンチウム(原子番号38の元素)は、「HOMA-IR」というインスリン抵抗性の指標と負の相関を示したそうです。つまり、亜鉛とストロンチウムの存在が、糖尿病を防ぐ方向に働くことがわかったのです。

さらには、難病指定されているクローン病、失明につながる加齢黄斑変性症、激増しているADHD(注意欠陥・多動性障害)やうつ病、男性不妊症などの裏にも、亜鉛不足が隠れている可能性が指摘されています。

有害金属が蓄積しやすくなる

ここでもう一度、以前の記事の元素周期表を見てください。

亜鉛(Zn)は12族に属しています。亜鉛とバランスを取り合っている銅(Cu)は、同じ周期(横軸)の11族にいますね。

では、亜鉛から視線を下に動かし、同じ12族にどんな元素が存在するか見てください。有害金属のカドミウム(Cd)や水銀(Hg)が目に入るでしょう。
 カドミウムはイタイイタイ病、水銀は水俣病の原因物質として知られ、どちらも体内の蓄積量を抑えたい物質です。ところが、亜鉛が減ってしまうと、これらが溜まりやすくなるのです。

私たちの体では、有害物質の排出を担う「メタロチオネイン」というタンパク質がつくられています。このタンパク質は、普段は亜鉛と結合して体内に存在しています。ところが、カドミウムや水銀が入ってくると、亜鉛と離れ、それら有害金属にくっついて体外へ排出してくれます。

つまり、普段から亜鉛がしっかりあれば、有害金属の侵入に備えて待機しているメタロチオネインも十分存在できますが、亜鉛が足りないとメタロチオネインも少なくなるため有害金属が溜まりやすくなってしまうわけです。

もともと、日本人はカドミウムや水銀が多い傾向にあります。というのも、お米にカドミウム、マグロのような大型魚には水銀が含まれるからです。

美味しい和食を食べ続けるためにも、亜鉛に無関心ではいけないのです。

満尾正(みつお・ただし)/米国先端医療学会理事、医学博士。1957年横浜生まれ。北海道大学医学部卒業後、内科研修を経て杏林大学救急医学教室講師として救急救命医療の現場などに従事。ハーバード大学外科代謝栄養研究室研究員、救急振興財団東京研修所主任教授を経た後、日本で初めてのアンチエイジング専門病院「満尾クリニック」を開設。米国アンチエイジング学会(A4M)認定医(日本人初)、米国先端医療学会(ACAM)キレーション治療認定医の資格を併せ持つ、唯一の日本人医師。著書に『世界最新の医療データが示す最強の食事術 ハーバードの栄養学に学ぶ「究極の健康資産」の作り方』(小学館)など。

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