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美味しさの正体とは?

ダイエットを成功させるコツを引き続き解説していきましょう。食欲をコントロールするためには、動物にとって最もプリミティブ(原始的)な本能の一つである嗅覚を味方につけて、食事を十分に堪能することです。イェール大学の神経生物学教授で嗅覚神経科学領域の権威であるシェファード博士は、著書「美味しさの脳科学」の中で「美味しさの正体は嗅覚である」と明確に述べています。純粋な味だけではなく、食べ物の香りを楽しむことによってより味わい深くなり満足感を得られやすくなります。早食いや大食いによる「量」の満腹感よりも、よく噛んで味と香りを十分に楽しむ「質」の満腹感を得ることが食を満喫することにつながります。かさ増しして脳をごまかすよりも、嗅覚をフルに働かせて少量の食事を美味しく食べて満足できれば、ダイエット効果も高まることは言うまでもありません。

知られざる嗅覚と記憶の深い関係

嗅覚は記憶と深く結びついているといわれています。口腔内から鼻に抜ける香りや風味のパターンは脳に認識されると、経験と共に記憶されます。 「香りの記憶」と言っても良いでしょう。誰しも心当たりがある「あるある体験」に、香りによって昔の記憶がよみがえる「プルースト効果」という現象があります。例えば、しばらくぶりに海辺に出かけたときに磯の香りが鼻をくすぐると、幼少期の海水浴の思い出がよみがえることがありますね、また、家族で出かけたレストランの味を懐かしく思い出したりすることがあります。いわゆる「おふくろの味」や郷土料理を懐かしんだりするのも、このプルースト効果のおかげです。風味が知覚や情動、記憶などと関わっていることを実感できるのではないでしょうか。実は、喜怒哀楽に関わる大脳辺縁系を刺激できる感覚は五感の中で嗅覚だけだといわれています。

情動を満たして満腹感を

馴染みの味を食することは情動を満たして心を落ち着ける効果や満足感を得ることにつながります。一方、新しい味覚を追い求めることは好奇心を刺激します。ドーパミン分泌を促して行動を喚起するのはワクワク感を増して脳を活性化する意味では良いことですが、ダイエットとは逆のベクトルですね。美食を楽しむなら、ダイエットの妨げにならないように「週に一度」とか「ごぼうびの日」など、ある程度タイミングを限定して良いのかもしれませんね。グルメ活動のときは満腹や空腹を示すVAS(Visual Analog Scale)をより意識すると良いですね。

加齢によって起こる味覚や嗅覚の変化

味覚や嗅覚は生き生きした人生を送るために欠かせない能力ですが、高齢になると味蕾の数が徐々に減るため味を認識するのに時間がかかるようになります。ただ、味覚細胞は新陳代謝が盛んで10日ほどで生まれ変わるため、年を取っても純粋な味覚はあまり衰えないようです。嗅覚細胞も加齢に伴って減少するため嗅覚は徐々に加齢によって衰えていきますが、それを補うようににおいの記憶が強化されていきます。(もし匂いを感じても、何の匂いだったか思い出せない場合は認知障害ですから脳機能の低下の可能性があります) 嗅覚障害は日常の危険に気づきにくくなるだけでなく食欲を減退させて健康を害するため、もし「においを感じにくくなったな…」と感じたら速やかに医師に相談しましょう。

脂質はダイエットの敵!?

さて、香りや風味に加えて、食事に深みを与える要素に脂質が挙げられます。かつては脂質はダイエットの天敵だと思われていましたが、実は良質な油はダイエットの味方であり健康の元です。脂肪細胞が出すメッセンジャー物質は満腹中枢を刺激して食欲抑制を促すレプチン他、約600種類もあるといわれています。栄養や酸素が足りなくなると、メッセンジャー物質の指令によって新たに血管が作られることも最新の研究により分かっています。脂質が生存にとっていかに重要かを示していますね。免疫細胞へ細菌やウィルスをやっつける指令を出しているという説もあり、脂質は健康を維持するうえで非常に大切です。体脂肪が少なすぎると怪我をしたり風邪を引きやすくなったりするのも脂肪細胞による免疫サポート機能が関与しているからだといわれています。

食を満喫するために

食べ物の風味や脂質もしっかり味わって食を満喫するには、アゴをよく動かして咀嚼することです。よく噛むことで嗅覚を刺激し記憶や情動を呼び起こし食事をより楽しむことができるようになります。食事どきはスマホやテレビを消して目で食べ物を楽しみ、集中して香りや風味まで味わうと良いですね。

文/藤原邦康
1970年静岡県浜松市生まれ。カリフォルニア州立大学卒業。米国公認ドクター・オブ・カイロプラクティック。一般社団法人日本整顎協会 理事。カイロプラクティック・オフィス オレア成城 院長。顎関節症に苦しむアゴ難民の救済活動に尽力。噛み合わせと瞬発力の観点からJリーガーや五輪選手などプロアスリートのコンディショニングを行なっている。格闘家や芸能人のクライアントも多数。著書に『自分で治す!顎関節症』(洋泉社)がある。

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