京都『松葉』の人気メニュー「たわらそば」。大きな「おあげ」の中身は……。
蕎麦は、いろいろな食材と合わせても結構「どんとこい」と受け止めてくれる、ふところの深い食べ物だ。地方や季節によって、蕎麦と他の食材の組み合わせは昔から様々に試みられてきた。
特に京都のように食文化の発達した地域では、老舗の蕎麦店のメニューを見ると、100を越える種類が並んでいたりする。客も、様々な味を求めるだろうし、蕎麦職人もあれこれ作りたくなるのだろう。日本は春夏秋冬、素晴らしい旬の食材が次々と出てくるため、蕎麦と組み合わせずにはいられなくなるのかもしれない。
京都ならではの蕎麦としてよく知られているのが「にしんそば」だ。にしんの干物である身欠きニシンを甘露煮にして、温かい蕎麦の上に乗せる。京都四條南座に隣接した蕎麦店『松葉』の人気メニューのひとつである。『松葉』は創業文久元年(1861)という、140年以上に及ぶ長い歴史を持つ京都の老舗蕎麦店である。
同店の品書きを開くと、たくさんの種類の蕎麦が並んでいる。その中から、最近「にしんそば」を追うほどの人気メニューになりつつあるという蕎麦をいただいてみた。
メニューは「たわらそば」。温かい蕎麦の中央に、中身がこぼれ出ないように俵のように縛られた“おあげ”が置かれた、あんかけの蕎麦である。さて、おあげの中には、何が入っているのだろう。
開けてみなければわからない、まるで福袋のような蕎麦だ。
これだけ厳重に縛ってあるのだから、きっと、何か良いものが入っているに違いない。頭の中に、京都の食材が、あれこれ浮かんでくる。
中身をあれこれ想像する楽しみを奪ってしまわないように、おあげの中身は謎のままにしておいたほうが良いのかもしれない。映画も、ストーリーの結末を話してしまうほど、野暮なことはない。
じつにミステリアスな「たわらそば」。京都に旅した折、時間があったら『松葉』を訪ね、“たわら”の謎を解いていただきたい。
■松葉 本店
住所/京都市東山区四条大橋東入ル川端町192
電話/075-561-1451
営業時間/10:30~21:30
定休日/水曜(祝日の場合は営業、季節により変更あり)
URL/http://www.sobamatsuba.co.jp/