添付した写真は、以前、中国に、ダッタン蕎麦の取材に行った時のもの。写っている女性は、ダッタン蕎麦料理の名人であり、イ族の伝統の技術の継承者だ。
彼女が持っているザルが、秘伝の逸品。粉の粒度を一定にするときに使う道具で、いわば、ふるいの代わりだ。
僕がカメラを向けると、彼女はザルを、自分の背中に隠して、撮影を拒否した。
「この目の編み方は秘伝なので、決して写真に撮ってはいけません」と、彼女は、唇を一文字に結んで、首を左右に振った。
そんなに重要なものなら、なおのこと見てみたい。僕は粘り強く彼女を説得し、「ダッタン蕎麦を待っている日本の友人たちのために」、イ族の秘伝を公開することを、しぶしぶながら承諾してもらったのだ。
彼女は背後に隠していたザルを体の前にかかげ、目をつむった。