文/鈴木拓也

昨今の猫ブームで、わが国の猫の飼育頭数は900万頭を超えた。キャットフード業界の市場も右肩上がりで、企業も続々と参入。専門ショップでは、数百種類ものキャットフードが並ぶ。
そのせいか、動物病院が受ける最も多い質問のひとつは、「キャットフードのおすすめはありますか?」だという。商品も関連情報も多すぎて、「キャットフードの沼」にハマってしまう飼い主は少なくない――そう指摘するのは、「獣医師くぅ」先生だ。
獣医師くぅ先生は、ペンネームのとおり本業は獣医師。ペット栄養管理士の資格を持ち、YouTubeチャンネル「くぅのキャットフード研究室」も運営する。玉石混交の情報が氾濫するなか、適切な情報を発信する、その道のプロである。さらに先日、『愛猫の健康と幸せを守る 獣医師くぅ先生の猫の食事がわかる本』(Gakken https://hon.gakken.jp/book/2380266100)を上梓した。
本書には、「キャットフードの沼」から抜け出すアドバイスが盛りだくさん。その一部を紹介しよう。
ドライフードの糖質量にご用心
獣医師くぅ先生は冒頭で、「本来の食性を理解して食事を選ぶこと」が、猫の健康管理の出発点だと説く。
原種となる野生の猫(リビアヤマネコ)は完全肉食で、ウサギなどの小動物を捕食する。獲物から得られる栄養は、水分、タンパク質、脂質がメイン。人間と違って、糖質は外部から摂らなくても問題ない。
そのため、「糖質の量が多いフードは、本来の栄養バランスが外れている可能性が高い」と指摘する。特にドライフードは、成形のために糖質が使われ、無用の栄養素を摂ってしまいがち。多すぎれば、肥満や生活習慣病のリスクになりうるとも。
そこでドライフードを与える際は、糖質量を把握することが重要。成分表に糖質の表示義務はないため、【糖質(約%)=100-タンパク質(%)-脂質(%)-粗繊維(%)-灰分(%)-水分(%)】で計算すると、おおよその含有量がわかる。これが30%以下であればセーフだという。
対してウェットフードは、糖質が低いものが多い。購入したドライフードの糖質量が多ければ、ウェットフードの比率を高くすることでトータルの摂取量を抑えられる。
朝夕2回の給餌でOK
猫の1日の食事回数についても悩む飼い主は多い。
獣医師くぅ先生の答えは、子猫のうちは「1日3~4回」、生後6か月を過ぎたら「朝夕2回」。もっとも成猫になっても、3~4回に分けた給餌で問題はないそうだ。
注意したいのは置き餌。「食べ過ぎにより肥満のリスクが上がる」など欠点があり、すすめられてはいない。
食事の内容は、総合栄養食をカロリー比率で8割以上にするという前提で、適宜種類を変えるフードローテーションが推奨されている。具体的には、「ドライフードはその商品を使い切るタイミングを目安に次の銘柄へ、ウェットフードは2~4種類を用意して飽きる前に入れ替える」というもの。ずっと同じフードだと、飽きて突然受け付けなくなった時に替えが効かず、食欲不振が長引くリスクがあるからだ。
また、猫草については、新鮮さと清潔さを保つことに留意し、少量ならOKだそう。必須栄養素ではないので、あくまでも猫が好むならという条件つきとなる。
厳禁なのが、にんにくやチョコレート。人間には平気なこれらの食品も、猫にとっては極めて有害。にんにくは赤血球を壊して貧血を起こし、チョコレートは心停止のリスクすらある。くれぐれも誤飲しないよう保管に努めたい。
肥満対策はカロリーを15%減らす
最近は、肥満の飼い猫が増えている。もし、かかりつけの獣医師から、体重を落とすよう言われたら、どうすべきか?
獣医師くぅ先生は、「満足度を下げずにカロリーを15%減らす」ダイエットが肥満解消の最短ルートだとする。
キャットフードのカロリーは、成分表示に記されている。1日に食べるキャットフード全部のカロリーを合算し、それに0.85を掛けたカロリーに減らすわけだ。このとき注意したいのは、単純に食事の総量を減らしてしまわないこと。空腹ストレスが出やすくなってしまうため、総量はそのままに、低カロリーのウェットフードに切り替える策をとる。
ダイエットを始めたら、体重の減少ペースにも注意する。目安は、「1週間で現在の体重の1%」減。もし3%以上も減っているのなら問題だ。定期的に体重を測りながら、ほんの少しずつの減量を続け、目標体重に到達しての安定を目指す。
低カロリーにしたのに体重が減らないなど異変があれば、代謝などの問題が隠れているかもしれない。この場合は、獣医師に早めに診てもらうことが肝心。
* * *
本書にはこのほか、信頼できるキャットフードメーカーの見極め方など、愛猫家なら知っておきたい情報が詰まっている。日頃、猫の食事に悩んでいるなら、読んで得るものは大きいだろう。
【今日の愛猫の健康に良い1冊】
『愛猫の健康と幸せを守る 獣医師くぅ先生の猫の食事がわかる本』

定価1870円
Gakken
文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライターとなる。趣味は神社仏閣・秘境めぐりで、撮った写真をInstagram(https://www.instagram.com/happysuzuki/)に掲載している。











