文・写真/りんみゆき(海外書き人クラブ/香港在住ライター)

香港を代表する世界の大スターであるブルース・リーは、32歳という若さでこの世を去ってしまった。しかし香港在住者や香港に訪れたことのある人は、街中のいたるところに彼が今でも存在していることに気が付くだろう。2020年は彼の生誕80周年記念の特別企画があり、さらに彼の姿を見かける機会が多かった。香港で出会える根強い人気のブルース・リーを紹介する。

主演作品がデザインされた記念切手

郵便切手は香港内で使用もできる

1940年11月27日生まれの俳優で、截拳道(ジークンドー)という哲学を創始した人としても知られているブルース・リーは1973年7月、32歳という若さで亡くなった。2020年は誕生80周年を記念して、香港郵政局は彼の誕生日である11月27日から記念切手を発売した。切手はいずれも4本の主演作品である『ドラゴン危機一髪』『ドラゴン怒りの鉄挙』『死亡遊戯』『ドラゴンへの道』をもとにしたデザインであり、「李小龍」は彼の漢字名だ。郵便局が開くと同時に買い求めるファンの姿も見られた。

私物が多く展示されるブルース・リー展

展示品の写真撮影は禁止されている

没後40周年を記念して2013年から開催されている香港文化博物館(https://www.heritagemuseum.gov.hk/)のブルース・リー展には香港内や海外から360万人が訪れ、変わらぬ人気の高さを示している。ブルース・リーの娘であるシャノン・リーの協力のもと、約600点の映画の衣装や小道具、アクションシーンの手書きの絵コンテなどが展示された。プライベートなものでは家族にあてた手紙やチャチャを踊っている写真や動きのメモ、センスのいい私服、さらには娘を抱っこして優しい表情をしているパパの顔をしているブルース・リーの姿も白黒写真で見られる。ファンからのコメントには「ブルース・リーは、西洋の人への中国人や文化に対する偏見を彼の作品や生き方を通して変えたカンフースター以上の存在。」などがあり、彼が社会に与えた影響は計り知れない。当初は2020年までの予定だったが、大好評につき2021年は展示品をリニューアルし、2026年まで延長されることになった。

観光地でも行列ができる人気

世界中のファンからの投票によりこのポーズに決まった

香港映画の世界をテーマにしたアベニュー・オブ・スターズ(https://www.avenueofstars.com.hk/en/)というプロムナードには、ジャッキー・チェンをはじめとする香港スターの手形があり、ブルース・リーの銅像もここにある。2005年の中国映画100周年記念で「今世紀最も影響力のある俳優」として選ばれ、誕生65周年の11月27日に2メートルの銅像が建てられた。彼の格言である「Be like water(水のようになれ)」を取り入れた水の中でポーズを構えるこの銅像の前で、同じ格好をして記念撮影をするのが定番となっている。

アチョーという声が聞こえそうなくらいの迫力

百万ドルの夜景で有名なザ・ピークにある香港マダムタッソー蝋人形(https://www.madametussauds.com/hong-kong/en/)では、アクション姿のブルース・リーに出会える。説明書きには「タイム誌は20世紀で最も影響力のある100人の一人として挙げた」とある。

映画ロケ地の青山禅院

撮影中の写真も見ることができる

香港の中心地から離れた静かな山の中腹に、『燃えよドラゴン』のロケ地にとなった青山禅院(http://www.tsingshanmonastery.org.hk/)がある。 敷地内にはシーンごとに登場人物のカットアウトや説明書きがあり、映画の世界を感じることができる。この場所は「Don’t think. Feel!」(あれこれ考えるな。感じとれ!) の名言を少年に放ったところだ。

母校に残る記憶

正門の右側の壁にある

1951年から1956年まで通っていたラサールカレッジの壁には、ブルース・リーが5年生だった頃のクラス写真がある。また1970年代に長男ブランドンが通っていた頃の、制服姿のブランドンと長女シャノンの写真もあり、お父さん似のブランドンはお茶目な表情をしている。学校の外壁にあるので、誰でも見学することができる。このエリアにはブルース・リーが生前住んでいた邸宅があり、そこをブルース・リー博物館にしたいという香港人の願いがあったが、それは実現しなかった。

香港島の東西を走行するブルース・リートラム

ブルース・リートラムは3台用意された

生誕80周年を記念したトラムと2階建てバスが誕生日である11月27日から期間限定で運行された。黄色いジャンプスーツを着たコミカルなブルース・リーと香港の街並みが描かれたラッピングトラムは香港島の東西を、また九龍側では『死亡遊戯』をモチーフにした二階建てバスが、九龍の街中を運行した。

ここ数年の香港は大規模デモによる混乱や新型コロナの感染拡大であまりいいことがない。しかし2019年のデモでは、彼の名言である「Be like water(水のようになれ)」は学生に支持され、2020年~21年のコロナ禍には街中をバスやトラムの肖像画になって気分を盛り上げてくれている。ブルース・リーは香港の永遠のヒーローで、香港人に勇気と元気を与え続けてくれる存在である。

文・写真/りんみゆき(香港在住) 1994年より香港在住。雑誌、機内誌、情報誌の寄稿多数。著書「海外のマラソンを走ってみた」など。ライター、通訳、コーディネーターとして活動している。海外書き人クラブ会員(https://www.kaigaikakibito.com/

 

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