春ソバのあとは、夏ソバの花が見頃となる。日本各地のソバの花見の名所をいくつか挙げてみよう。
まず、広々としたスケールの大きな花畑の眺望を楽しみたいなら、北海道だ。羊蹄山麓や十勝、幌加内など、大規模にソバを栽培している地区は多い。花の見頃は、7月末から8月中旬くらいまで。ただし、今年はかなり気温が低いので、ソバの播種が遅れている。花見に行かれる方は、現地の様子を確認してからにしていただきたい。
謡曲の鬼女紅葉が生まれた福島県の会津は、北海道とはソバの品種が異なるため、花の時期は少し遅れる。山都町などの蕎麦処に行く途中、山道の脇に清楚なソバの花を見かけるのは、9月の中旬になる。
信州戸隠では、屏風のようにそそり立つ戸隠山を背景に、ソバ畑の絶景を堪能することができる。ここも花期は9月の中旬。
また日本のソバは白い花がほとんどだが、中国やチベットに行くと、赤いソバの花が一面に広がる景色を目にする。長野県の箕輪町「赤そばの里」では、ヒマラヤの高地から持ち帰って品種改良した「高峰(たかね)ルビー」という品種の赤い花を見ることができる。見頃は9月中旬から約1ヶ月間。「高峰ルビー」で打った蕎麦は、近くの蕎麦店『留美庵(るびあん)』で味わえる。
どうしても遠方に行くことができないという方は、今の時期にソバの種を鉢に播いておけば、自宅に居ながらソバの花を愛でることもできる。蕎麦は食べて美味しいだけでなく、様々な魅力で人を幸福にしてくれるものなのだ。