短角牛ロースココットロースト、赤ワインソース

文・写真/山本益博

ミキモトビルが改装のため、そのビル地下のレストラン「レカン」もしばらく休業していましたが、この6月1日に新装オープンしました。かつての典雅な内装が、モダンで明るくなりました。

このレストランに初めて出かけたのは1974年春、忘れもしない、料理長は2代目で井上旭(のぼる)シェフ(現京橋「シェ・イノ」オーナーシェフ)でした。初代はフランス人のロベール・カイヨーシェフで、私は2代の井上シェフから3代の城悦男シェフ、現4代の高良康之シェフまで通い続けているファンのひとりです。

「レカン」を一言で言うのはとても難しいのですが、1970年代から街場のレストランを常にリードし続けてきた東京を代表するグラン・メゾンと言えばよろしいでしょうか?

つまり、それまで、ホテルのメインダイニングのフランス料理が主流だったのを、フランスのレストランで修業し、そして70年代初めから次々にかえってきた気鋭の料理人たちが「ラ・ヌーヴェル・キュイジーヌ・フランセーズ」と呼ばれた「新しいフランス料理」を街場のレストランで展開し、新たな潮流を生み出しました。井上旭シェフは、まさしくその一人でした。

食材も、例えばホテルの「牛肉」から街場は「子羊」へ舵を切り、井上シェフの「子羊のパイ包み焼きマリアカラス」は、大人気を博しました。グラン・メゾンとして、フォアグラ、キャヴィア、トリュフと言った超高級食材を惜しげもなく、効果的に使ってきたのも「レカン」の伝統です。

新装なった「レカン」でも高良シェフが、前菜の「毛蟹」にはキャヴィアを添え、フォアグラには若クルミを合わせ、鱧のクネルにはオーストラリア産の旬の黒トリュフのデュクセルを詰めています。

フォアグラと若クルミのトーション仕立て

鱧のクネルと黒トリュフのデュクセル、ヴァンブランソースのグラティネ

その他、季節の食材として「鮎」「鮑」と言った「和」の食材を積極的に駆使して、「レカン」ならではのご馳走に仕上げてあります。

黒鮑のローストとアーティーチョクのフリカッセ

記念日やお祝いごとに伺うレストランとしてうってつけのグラン・メゾンが復活したのは、何とも嬉しいことですね。

『レカン』
■住所/東京都中央区銀座4-5-5 ミキモトビル B1F
■電話番号/03-3561-9706
■営業時間/ランチ 11:30~14:30(L.O.)、ディナー 17:30~22:00(L.O.)
■定休日/日曜および年末年始
http://www.lecringinza.co.jp/lecrin/

文/山本益博
料理評論家・落語評論家。1948年、東京生まれ。大学の卒論「桂文楽の世界」がそのまま出版され、評論家としての仕事をスタート。TV「花王名人劇場」(関西テレビ系列)のプロデューサーを務めた後、料理中心の評論活動に入る。

 

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