なぜ、徒歩7分なのか、その理由は尋ねたことはないが、たぶん、自分の生活圏の中にある蕎麦屋を大切にしなさいよという意味の「徒歩7分」なのではないかと思っている。
私の家の近くにある行きつけの蕎麦屋は、ちょっと個性のある店で、機械打ちの蕎麦を中心に出すのだが、一日20食ほど、手打ち蕎麦も用意する。
手打ちの分は、だいたい昼前には終わってしまうのだが、その後も、機械打ちの蕎麦があるので、売り切れたときは、それを頼むことにしている。

この店、どういう個性があるのかというと、店の奥にカウンターがあって、そこで天ぷらを揚げているのだ。客は、カウンターの椅子に陣取り、好みの天ぷらを注文し、揚げたての天ぷらを、蕎麦とともに味わう。この天ぷらが美味しくて、ときどき店の暖簾をくぐるのだ。
この店、蕎麦屋の看板は上がっているのだが、蕎麦屋というより、天ぷら屋と言ったほうが相応しい。それだけ、天ぷらが美味しいのだ。天ぷら屋が蕎麦も出しているのだと、私は解釈している。
もちろん、それで良いと思う。
うまい天ぷらと、ついでに蕎麦まで食べさせてくれて、ちゃんと満足させてくれるのだから。
どういう形であれ、満足できる店が身近にあるということは、とても幸運なことなのだと思う。

02_DSC4765

文・写真/片山虎之介
世界初の蕎麦専門のWebマガジン『蕎麦Web』(http://sobaweb.com/)編集長。蕎麦好きのカメラマンであり、ライター。伝統食文化研究家。著書に『真打ち登場! 霧下蕎麦』『正統の蕎麦屋』『不老長寿の ダッタン蕎麦』(小学館)、『ダッタン蕎麦百科』(柴田書店)、『蕎麦屋の常識・非常識』(朝日新聞出版)などがある。

1 2

 

関連記事

ランキング

サライ最新号
2024年
12月号

サライ最新号

人気のキーワード

新着記事

ピックアップ

サライプレミアム倶楽部

最新記事のお知らせ、イベント、読者企画、豪華プレゼントなどへの応募情報をお届けします。

公式SNS

サライ公式SNSで最新情報を配信中!

  • Facebook
  • Twitter
  • Instagram
  • LINE

「特製サライのおせち三段重」予約開始!

小学館百貨店Online Store

通販別冊
通販別冊

心に響き長く愛せるモノだけを厳選した通販メディア

花人日和(かじんびより)

和田秀樹 最新刊

75歳からの生き方ノート

おすすめのサイト
dime
be-pal
リアルキッチン&インテリア
小学館百貨店
おすすめのサイト
dime
be-pal
リアルキッチン&インテリア
小学館百貨店