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スイーツ界の絶滅危惧種!『サンゴダール・マルジュウ』のシベリア【東京下町の美味探訪1】

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文・写真/秋山都

サライ読者の方であれば、シベリアと聞いて懐かしく思う方もいらっしゃることだろう。

数十年前は東日本で多くのパン屋、ケーキ屋にあった「シベリア」という菓子が今、都内でもなかなかお目にかかれない、スイーツ界の絶滅危惧種となっている。

シベリアとは、カステラに羊羹(またはアンコ)がサンドされている菓子。というと簡単そうだが、薄く焼き上げたカステラの上に羊羹を流し込み、半分固まった状態でカステラを乗せる大変手間と時間のかかる菓子だ。

カステラと羊羹部分はぴたりとくっついており、それゆえに一体感のある甘みを味わえるのが特徴。

いつ、誰が考案したのか定かではないが、大正期にはあったと思われ、古川ロッパの名著『悲食記』には、早稲田中学に通っていた筆者が学校帰りに「富士」なるミルクホールでシベリアを食べていた描写が登場する。

「ミルクホールの硝子器に入っているケーキは、シベリヤと称する、カステラの間に白い羊羹を挿んだ、三角形のもの。(黒い羊羹のもあった)」――『悲食記』ちくま文庫

このシベリアが「昔も今も店の一番人気」だというのが、東京・日暮里にある「サンゴダール・マルジュウ」。主流は焼きそばパンやホットドッグ、たまごサンドやコロッケパンなどの惣菜パンだという、「町のパン屋さん」だ。創業は昭和7年。現在は3代目が店を守っている。

昭和20年の東京大空襲で焼け落ちたため、戦後に建て直した店舗は「表が洋風、裏が和風」という看板建築。

昭和20年の東京大空襲で焼け落ちたため、戦後に建て直した店舗は「表が洋風、裏が和風」という看板建築。

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店名にあるマルジュウとは、明治43年に米国から帰国した田辺玄平がドライイーストによる近代的な製パン法を持ち帰り、その技術を伝えた弟子であることを示す、いわばのれん分けのサイン。

アンパンで有名な「木村屋総本店」、クリームパンを創案した本郷赤門前の「中村屋」(新宿中村屋の前身)、またカレーパンの生みの親といわれる深川の「カトレア」などもこのマルジュウ一派であり、彼らによって日本独特のふんわりと柔らかいパンが生み出されたといわれている。

「サンゴダール・マルジュウ」のシベリアはすべて手作り。

「サンゴダール・マルジュウ」のシベリアはすべて手作り。

シベリアとカフェオレ。さっぱりと甘すぎず、後をひくおいしさ。コーヒーとの相性がよいようだ。

シベリアとカフェオレ。さっぱりと甘すぎず、後をひくおいしさ。コーヒーとの相性がよいようだ。

さて、そんな「サンゴダール・マルジュウ」のシベリアは、やはりふんわりとやわらかな食感が身上。たまごの風味豊かなカステラに、水ようかんのごとくフルフルとやわらかい羊羹がサンドされている。

控えめな甘さのせいか、朝のおめざにカフェオレと、午後のおやつにほうじ茶と、と何度でも食べたくなる罪なおいしさだ。

2代目ご主人の元へお嫁にきた広瀬竹子さんは販売を担当する看板娘。「シベリアを作るのはほんとに大変。え、レシピ? それはもちろん企業秘密よ(笑)」

2代目ご主人の元へお嫁にきた広瀬竹子さんは販売を担当する看板娘。「シベリアを作るのはほんとに大変。え、レシピ? それはもちろん企業秘密よ(笑)」

シベリアは2個入りで290円。もちろんカステラも羊羹も手作りだ。いまや東京都内でも手作りのシベリアを置く店は数少ない。「地味なお菓子だけど作る手間が大変で、だんだん少なくなっちゃったのかしらね。でもウチは店がある限り、作り続けますよ」(広瀬竹子さん)。やわらかな笑みに自信がのぞいた。

【サンゴダール・マルジュウ】
■住所/東京都荒川区西日暮里3-2-3
■アクセス/JR「日暮里」駅徒歩3分
■電話/03-3821-5309
■営業時間/11:00~22:00
■不定休

文・写真/秋山都
編集者・ライター。元『東京カレンダー』編集長。おいしいものと酒をこよなく愛し、主に“東京の右半分”をフィールドにコンテンツを発信。谷中・根津・千駄木の地域メディアであるrojiroji(ロジロジ)主宰。

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