「いただいた日本酒、いつまでに飲めばいいの?」。そんな疑問を持ったことはありませんか。日本酒は、食品表示制度上、一般の加工食品のように賞味期限表示を必須としない扱いです(食品表示法施行規則 第9条により)。保存方法さえ適切であれば長く楽しむことができます。ラベルにある日付は“製造年月”であって賞味期限ではないのです。2023年からはこの表示も任意表示になり、ボトルに記載のないものも今後は出てくると思います。今回は、日本酒の賞味期限と保存方法について詳しくご紹介します。

文/山内祐治

大吟醸の日本酒はいつまでに飲むべき? 賞味期限の考え方

大吟醸や純米大吟醸をいただいた際、「早く飲まないと悪くなるのでは」と心配になる方も多いでしょう。実際のところ、日本酒には法律上の賞味期限表示義務はありません。ただし、大吟醸特有の華やかな香りを最大限に楽しむためには、保存方法に気を配る必要があります。

大吟醸の魅力は、リンゴや洋梨、メロン、バナナといった果実を思わせるフルーティーな香りにあります。この吟醸香は温度が高い状態にあると変化したり減衰してしまうため、冷蔵環境での保管が必須です。特にリンゴや洋梨系の香りがするお酒は、できれば0度を超えない温度帯で保管すると、香りの変化を最小限に抑えることができます。

一般的な冷蔵庫で保管する場合、華やかな香りのする大吟醸は1か月程度で飲み切るのが理想です。一方、バナナやメロンのような香りがするタイプは、半年程度保管しても大きな変化は見られません。ただし、大吟醸や純米大吟醸は、リリースされた時点で美味しく飲めるように調整されているため、購入したらなるべく早めに楽しむことをおすすめします。

開封後の日本酒の賞味期限はどれくらい? 保存のコツ

開封後の日本酒について「いつまでに飲み切らなければいけないの?」という質問をよく耳にします。日本酒の保存で重要なのは、温度変化と空気への接触頻度です。四合瓶を1、2回程度開けて飲んだ場合、酸化の進行や香りの減衰はそれほど気にする必要はないものの、開封後は香りや味が少しずつ変わるためできれば早めに。目安としては数日〜数週間、長くても1か月以内を意識すると安心です。

また、開封時、栓に触れる際の取り扱いにも注意が必要です。ベタベタ触ったり、栓を下にして置いたりなどはしない様にしましょう。もし可能なら、栓をアルコールなどで消毒して締め直す、といったことも気を遣えるとよりお酒の保存に対して良い効果を及ぼします。

保存環境については、冷蔵庫のドア部分は避け、振動の少ない場所に立てて保管するのがおすすめです。一方で、冷蔵庫に空きがなく常温で保存する場合は、できるだけ早く飲み切りましょう。ただし例外もあります。信頼できる酒販店で常温の棚に並んでいたお酒は、常温保管でも問題なく、むしろ味わいが膨らんで変化していく楽しみがあります。

よく質問される真空ポンプ(バキュバンなど)についてですが、日本酒の場合は必ずしも推奨できません。日本酒の香気成分はワインに比べて少なく、加えて酸化に対してそれほどナイーブではありません。真空ポンプで吸いすぎると、かえって香気成分を外に吐き出してしまう可能性があります。香りの減衰が気になる場合は、アルゴンなどの不活性化ガスを入れる方がむしろ効果的です。

開封前の生酒の賞味期限は? 鮮度が命の理由

生酒は火入れ(加熱殺菌)していないため、酵素が失活していません。そのため基本的には鮮度が命と言えます。特に濁りのある生酒の場合、酵母が残存している可能性もあり、味わいの変化が起こりやすい特徴があります。ほぼすべての生酒は、冷蔵庫で5度以下の保存を心がける必要があります(酒類総研ガイドより)。

未開封であっても、生酒のフレッシュな香りやフルーティーさを楽しむためには、できれば1〜2か月程度で飲み切るのが理想的です。生酒は「飲むために買う」という感覚で、購入したらすぐに楽しむのがおすすめです。

ただし例外も存在します。日本酒に慣れてきた方は、意図的に寝かせられる生酒や、熟成生酒として展開されている銘柄にチャレンジするのも面白いでしょう。しかしこれはごく一部の製品であり、ほとんどの生酒は早めに飲む必要があると考えてください。

未開封の日本酒を常温で保存する場合の賞味期限

常温保管については、お酒の種類によって適否が大きく異なります。まず避けるべきなのは、ほとんどの生酒と「吟醸」と付くお酒です。華やかな香りや生のフレッシュさを特徴とするお酒は、常温保管では変化が大きく、劣化につながる可能性が高いため、基本的に冷蔵保管が必須です。

一方で、それ以外のお酒については、常温保管することで熟成を進める楽しみ方もあります。メイラード反応による香ばしさが付与され、独特の風味が生まれることがあります。日本酒に慣れてきた方には、こうした変化を楽しむのも一つの選択肢です。

常温保管する際の注意点として、直射日光は必ず避けてください。日光臭と呼ばれる独特の香りが発生してしまいます。また、朝晩と昼間の温度変化が激しい場所も避けるべきです。押し入れや台所の戸棚のように、温度変化が緩やかな環境で保管すると、良好な熟成が期待できます。


ボトルに記載されているのは、賞味期限ではなく、製造年月。ただし、その記載もない場合がある。

賞味期限切れと思った日本酒の意外な使い道

「賞味期限が切れた」と思っている日本酒でも、実は飲めなくなるわけではありません。まずは一度試してみることをおすすめします。保管中に味わいが大きく変化していることもありますが、飲めないほど劣化しているケースは稀です。

時間が経った日本酒を試す際は、ガラスの器ではなく陶器や漆の器で味わってみてください。シェリーや紹興酒のような複雑な香りを持つお酒に変化していることがあり、意外な美味しさに出合えるかもしれません。また、冷たいままではなく、電子レンジで少し温めてお燗酒として楽しむと、まったく印象が変わることもあります。

それでも好みに合わない場合は、料理酒として活用しましょう。日本酒は現在あるアルコール飲料の中で、魚の臭みを効果的にマスキングできると言われています。煮物や鍋料理を作る際、水と同量程度の日本酒を入れ、沸騰後数分程度アルコールを飛ばしたものに昆布を入れて出汁として使用すると、魚料理が格段に美味しくなります。米を炊く際に0.5〜1割程度加えるのもおすすめです。

ただし、とても酸っぱかったり、ほこりっぽい匂いがしたり、明らかに嫌な感覚があるものは使用を避けてください。一口味見をする程度であれば、健康に悪影響を及ぼすほど劣化したものはほぼありません。自分の感覚を信じることが大切です。

まとめ。日本酒の賞味期限を気にしすぎず、正しい保存で長く楽しもう

日本酒には明確な賞味期限がないというのが最も重要なポイントです。「もうダメかな」と思っても、まずは試してみる価値があります。冷たいまま飲んで物足りなく感じても、陶器や漆の器で、あるいはお燗にすることで、思いがけない美味しさに出合えることもあります。

生酒や吟醸酒は冷蔵保管で早めに楽しむ、それ以外のお酒は常温で熟成させる楽しみ方もある、時間が経ったお酒は料理に活用するなど、日本酒には様々な楽しみ方があります。中華料理やトマトソースとの相性も良いため、料理酒として使う際は様々な料理に挑戦してみてください。

山内祐治(やまうち・ゆうじ)/「湯島天神下 すし初」四代目。講師、テイスター。第1回 日本ソムリエ協会SAKE DIPLOMAコンクール優勝。同協会機関誌『Sommelier』にて日本酒記事を執筆。ソムリエ、チーズの資格も持ち、大手ワインスクールにて、日本酒の授業を行なっている。また、新潟大学大学院にて日本酒学の修士論文を執筆。研究対象は日本酒ペアリング。一貫ごとに解説が入る講義のような店舗での体験が好評を博しており、味わいの背景から蔵元のストーリーまでを交えた丁寧なペアリングを継続している。多岐にわたる食材に対して重なりあう日本酒を提案し、「寿司店というより日本酒ペアリングの店」と評されることも。

構成/土田貴史

 

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