文/鈴木拓也

日本人は昔から、一年を二十四の区切りで分けた二十四節気に親しんできた。啓蟄、春分、夏至、大寒など、季節感が失われつつある現代でも、なじみのある節気は残っている。

薬膳の世界では、この二十四節気が重要視されているという。そう説くのは、増子友紀子さん。仏・伊料理人として長年活躍した後、国際薬膳師の資格を取得。今は、薬膳にあかるい料理家として知られる。

増子さんによれば、節気に合わせた食材・調理法を選ぶことは、健康につながる食生活のヒントになるそうだ。例えば、季節の変わり目である春分だと、自律神経が乱れやすいなど、春先特有の疲れが出やすい。そこで、胃腸の調子を整え、気を養うために、春キャベツがすすめられている。

こうした考えのもと、節気に応じた料理のレシピをまとめたのが、新著『二十四節気を楽しむ薬膳パスタ』(MdN https://books.mdn.co.jp/books/3225403020/)だ。

薬膳といえば中華や和食を思い浮かべるが、本書はパスタ一色というのが、新味がある。日本人には定番のスパゲッティやマカロニだけでなく、フジッリ、ブカティーニ、カッペリーニといった耳慣れないパスタも出てきて、興味をそそる。あわせて使う食材も、旬の野菜に加えて、バジル、トマト、オリーブ油などイタリアンで健康的なものが主体。

薬膳×パスタの組み合わせで、どんな料理が生まれるのか。参考までに、本書のレシピを3点紹介しよう。

「骨つき鶏もも肉のポルチーニクリームパスタ」

冬至にぴったりの料理として登場するのが、こちら。1年でもっとも日照時間が短く、陰気が満ちるため、陽気と気血を補う食材である鶏肉がメイン。これに、脾胃(消化器系)の働きを助けるポルチーニ、陰虚体質を改善する生クリームも加わる。

【材料(2人分)】
・タリアテッレ(袋の表示通りにゆでる)……120g
・鶏もも肉(骨つき/塩少々をふり、常温に戻す)……2本(500g)
・ポルチーニ(乾燥)……10g
・玉ねぎ(薄切り)……1/2個分
・セロリ(斜め薄切り)……1/2本分
・にんにく(みじん切り)……1かけ分
・白ワイン……50ml
・生クリーム(乳脂肪分35%以上)……100ml
・塩……適量
・オリーブ油……大さじ1
・粉チーズ、粗びき黒こしょう、イタリアンパセリ(刻む)……各適量

【作り方】
1. ボウルにポルチーニを入れ、水200mlを注いで30分ほど浸す。水けをきり、粗く刻む。
※戻し汁はこしてとっておく。
2. フライパンにオリーブ油、にんにくを弱火で熱し、香りが出てきたら鶏肉を皮目を下にして入れて焼きつける。全面に焼き色がついたら一度取り出す。
3. 2のフライパンに玉ねぎ、セロリ、ポルチーニを加え、しんなりするまで中火で炒める。白ワインを加えて軽く煮詰め、1の戻し汁を加えて鶏肉を戻し入れ、蓋をして弱火で20~25分煮る。生クリームを加えてさらに5分ほど煮込み、塩で味をととのえる。
4. タリアテッレとゆで汁大さじ2程度を加えてからからめる。
5. 器に盛り、粉チーズ、粗びき黒こしょうをふり、イタリアンパセリを散らす。

「ラム肉と黒豆、大根の煮込みパスタ 松の実とオレンジ風味」

1月22日頃は、冬の冷え込みがピークを迎える大寒となる。この時季に必要なのが、生命力の源となる腎をいたわり、体を温めること。そこでラム肉と黒豆の出番。ラム肉は体を温め、食欲不振や冷え性を改善し、黒豆と共に腎を補う働きがある。もう1つのメインである大根は、余分な熱を冷まして潤いを補う効果があるそうだ。

【材料(2人分)】
・ブジアーテ(または好みのマカロニ/袋の表示通りにゆでる)……120g
・大根(皮をむき小さめの乱切り)……200g
・ラム肩ロース(またはもも)肉(大きめの一口大に切る)……400g
・黒豆(煎るまたは水煮)……80g
・にんじん(乱切り)……1本分
・玉ねぎ(粗みじん切り)……1/4個分
・オレンジ(果肉は1cm角に切り、皮はすりおろす)……1/4個分
・にんにく(つぶす)……1かけ分
・白ワイン……50ml

・塩、黒こしょう……各適量
・オリーブ油……大さじ1
・松の実(軽く煎る)……大さじ1
・イタリアンパセリ……適量

【作り方】
1. フライパンにオリーブ油、にんにくを弱火で熱し、香りが出てきたらラム肉を入れて中火で焼く。焼き色がついたら玉ねぎを加え、しんなりするまで炒める。大根、にんじん、黒豆を加えて3分ほど炒めたら、白ワインを加えて軽く煮詰める。
2. 水150mlを加えて蓋をして、焦げないように途中水を足しながら弱火で20~25分煮込む。オレンジ果肉を加えてざっくり混ぜ、塩、黒こしょうで味をととのえる。
3. ブジアーテとゆで汁大さじ2程度を加えてからめる。
4. 器に盛り、松の実、オレンジの皮を散らし。イタリアンパセリをのせる。

「せりとちりめんじゃこ、めかじきのペペロンチーノ」

二十四節気では、春が始まるとされる立春は2月4日頃。冬に溜め込んだ老廃物を、体が排出しようとし始める時期である。そこで、排出を促すデトックス効果のある食材がすすめられている。このペペロンチーノには、余分な熱を冷まし、水の代謝を促す強力なデトックス食材であるせりが、ふんだんに使われる。

【材料(2人分)】
・スパゲッティ(1.4mm/袋の表示より1分短くゆでる)……140g
・せり(根本を切り落とし、茎と葉を分け、ざく切り)……2束分
・めかじき(切り身/2cm角に切る)……250g
・ちりめんじゃこ……大さじ4
・新玉ねぎ(薄切り)……1/4個分
・にんにく(薄切り)……2かけ分
・赤唐辛子(輪切り)……1本分
・白ワイン……大さじ2
・塩……適量
・オリーブ油……大さじ3~4

【作り方】
1. フライパンにオリーブ油、にんにく、赤唐辛子を弱火で熱し、香りが出てきたらめかじきと玉ねぎを加え、めかじきが白くなるまで焼く。白ワインを加え、蓋をして5分ほど蒸し焼きにする。ちりめんじゃこ、せりの茎を加えて中火でさっと炒める。
2. スパゲッティとゆで汁50mlを加えてからめる。火を止め、せりの葉を加えて余熱で火を通し、塩で味をととのえる。
3. せりの葉を上にして器に盛り、ちりめんじゃこ適量(分量外)を散らす。

本書の料理撮影:鈴木泰介
本書の料理スタイリング:池水陽子

【今日のおいしい1冊】
『二十四節気を楽しむ薬膳パスタ』

増子友紀子著
定価1760円
MdN

文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライターとなる。趣味は神社仏閣・秘境めぐりで、撮った写真をInstagram(https://www.instagram.com/happysuzuki/)に掲載している。

 

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