「ご飯好き」を自任する方々が常備する、なくてはならぬとっておきの「めしのせ」を紹介。エピソードとともに語っていただいた。
暮らしの仲間「辛旨まさる漬け」
NHKのEテレで『きょうの料理』を担当して25年、番組では料理の先生と後藤さんとのやりとり、とりわけ後藤さんの発するダジャレが名物。先生にうけることもあれば、何事もなかったかのように淡々と番組が進行することもある。「お塩はシオシオ(少々)ですね、とかつい出てしまいます。プロデューサーから“ダジャレは1回の放送で2回までにしてくれ”と冗談まじりに言われています(笑)」という後藤さんに、これまで印象に残った「めしのせ」についてたずねた。
「まず思い浮かぶのが、故郷の岐阜の長良川で獲れる鮎の佃煮ですね。やや小振りの鮎を甘辛く炊いてあり、これがご飯によく合います。食べるとふるさとの景色が浮かんできます。“風土のフード”といいますか……」
『きょうの料理』でたくさんの「めしのせ」を見てきた後藤さんであるが、究極の一品があるという。「土井善晴さんの塩むすびです。米と米の間に空気が入るように、ふわっと握ります。これがおいしい。味付けは塩だけなので、ご飯のおともといえるかどうか微妙ですが、ご飯をおいしく食べてもらいたいという、土井さんの心遣いを感じます。心遣いもご飯のおともといえるかもしれませんね」
辛さのなかから旨みが伝わる
後藤さんの最近のお気に入りが「辛旨まさる漬け」。考案したのは小林まさるさん(90歳)だ。『きょうの料理』に出演している料理研究家・小林まさみさんの義父で、70歳でまさみさんのアシスタントになり、自身も料理研究家として活躍中である。
「醤油ベースの調味料に漬け込んだ国産の青唐辛子に、国産のホタテのコクが加わり、辛さが際立つなかに旨みを感じます。この唐辛子1〜2本で一膳はいけます」
取材・文/宇野正樹 撮影/湯浅立志 撮影協力/Cafe Lish
※この記事は『サライ』本誌2024年3月号より転載しました。
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東京の片隅で夜だけ営業する「めしのせ食堂」を舞台にした、山口恵以子さんの新作小説。身近に起こりうる10編の物語と、そこに登場する「ご飯のおとも」の商品情報を、写真とともに紹介した“小説とお取り寄せ情報”の二本立て。商品のセレクトはご飯のおとも専門家として活躍する長船クニヒコさんによる。読んで満足、取り寄せて満腹になる、おいしい一冊をぜひお手元に。