みなさんは、白米に載せていただく「ご飯のおとも」ってどうやって探していますか?

残念ながら、筆者はこれまで繰り返し食卓に並べたくなるような「マイ定番」的なアイテムと出会ったことがありませんでした。冷蔵庫を開けると、少し開けては食べずに残ってしまった瓶詰めやふりかけなどが山ほど溜まってしまっている有様です。

そんな時に出会った本が、2024年1月に発売された『山口恵以子のめしのせ食堂』。山口恵以子さんといえば、『食堂のおばちゃん』『婚活食堂』『ゆうれい居酒屋』シリーズが累計で100万部を突破するなど、食堂が舞台の人情系小説で多くのヒット作を持つ売れっ子小説家です。

オビにはしゃもじを持った割烹着姿の山口恵以子さんが登場。

本作の主人公も食堂のおばちゃんです。心温まる人情話がオムニバス形式で綴られる点はこれまでと同様なのですが、今回とくに面白いなと思ったのは小説内で登場する食材でした。

白米の上に乗せる“めしのせ”が主役!

小説の舞台となるのは、「めしのせ食堂エコ」という、ちょっと変わった名前の小さな軽食店です。おばちゃんがワンオペで切り盛りする一膳飯屋のような食堂で、供されるのは白ご飯と味噌汁だけ。その白ご飯の上にトッピングされる「ご飯のおとも」にこだわり、全国各地の「お取り寄せグルメ」が小説内で数多く登場します。

ぐっと引き込まれるストーリーはもちろん、本書はこの「ご飯のおとも」の描写がとても魅力的なのです。小説内で紹介された「ご飯のおとも」はすべて実在します。「これは食べてみたいな」と思ったら、すぐに手元のスマホで検索してオーダーしたくなるわけです。

そんな読者の心理を先読みしたかのように、本書は作品内に登場した約40もの「ご飯のおとも」の発売元情報やカラー写真を一覧化して掲載。とても気が利いています。

小説内で登場した「ご飯のおとも」は、すべて「めしのせ案内」として1ページずつ紹介されています。

筆者も、小説内で印象に残った「ご飯のおとも」を試そうと、さっそくいくつか購入してみました。そのうち、今回は本編第4話で登場する「具の9割牛タン 仙台ラー油」「ぶっかけコンビーフ」をご紹介します。深夜1時前に「めしのせ食堂エコ」を訪れたブラック企業に勤務する永井誠也に対して、店主が提案した「ご飯のおとも」です。

「具の9割牛タン 仙台ラー油」

「仙台ラー油」1瓶100g(900円)

まずはこちらから開封。ネット上では色々な販売サイトがありますが、今回はAmazonで2個オーダー。翌々日には自宅に届きました。

「食べるラー油」がブームになったのは、2008年頃でした。それから15年以上が経ち、激辛タイプや油少なめタイプなど、スーパーの棚には多彩なラインナップが並ぶようになりました。今や完全に「ご飯のおとも」として定着した感がありますが、この「具の9割牛タン 仙台ラー油」は牛タンエキスを配合した、仙台ならではのご当地版「食べるラー油」といったところでしょうか。

ごろっとした牛タンがラー油の海の中に浮いています。

小説内でも“具の九割が牛タンという圧倒的な肉の存在感と、辛すぎないラー油の美味しさが一体となって、ご飯が止まらなくなる”と書かれています。

これは楽しみです。

では、ご飯にかけて食べてみましょう。たっぷりのラー油の海の中に牛タンが浸かっています。牛タンとラー油をあわせてすくい取り、ご飯の上にのせました。

いや、これは美味い!

ラー油ベースの甘辛い調味料の濃厚なエキスが、牛タンの芯まで染み込んでいます。牛タンの旨味と唐辛子の辛さ、香ばしさが一体となって、味覚と嗅覚をフルに刺激してきます。最初に甘みと香ばしさが口の中に広がり、後から徐々に辛さが浸透してきます。ご飯と一緒に口に運ぶたび、甘さと辛さの波状攻撃を楽しめました。

かなりこってりした濃厚な味わいなので、ひと匙で、相当量のご飯を消費できます。あっという間にお茶碗2杯を平らげてしまいました。

ちなみに、小説内では“ゆでたまごや豆腐にトッピングしたり、じゃじゃ麺の味噌に混ぜるのもお勧めだ。そしてもちろん、たまごかけご飯とも相性はバッチリ”と、応用事例まで紹介されています。作者の山口さんも相当研究されているようですね。ぜひ、今度試してみようと思います。

「ぶっかけコンビーフ」

「ぶっかけコンビーフ」1瓶120g(980円)

さて、お次は、「ぶっかけコンビーフ」です。小説内でも、“黒毛和牛のテールと、伊豆の白浜海岸の海水から手作りした天然塩「満潮」を使用したコンビーフ”と説明されています。

こちらは、本の案内を頼りに、販売元「特選黒毛和牛牝専門 焼肉u」の公式サイト(https://mesu-ushi.com)からオーダー。一度に数多く作れないためか、注文してから自宅に届くまで3週間くらいかかりました。待たされた分、ワクワク感も高まります。

いただくまえに、もう一度小説を読み返してみました。“…ご飯にかけて食べるように、柔らかなフレーク状に加工されている。これもまた、ご飯が止まらなくなる一品だ”と書かれています。なるほど、これは期待できそうです。

ではいただきます。

いやいや、こちらも絶品でした。塩味がベースなのですが、キーンとくるようなストレートな塩気ではなく、とてもまろやかで、丸みのある上品な塩辛さです。口の中で和牛テールがホロホロと溶けて広がっていくので、旨味がじわりと脳まで届きました。程よくにんにくが効いていて、スタミナもつきそう。

これもまた、ご飯との相性が最高です。チャーハンの隠し味としてひとつまみ入れても、美味しく仕上がるかもしれません。

「ご飯のおとも」日本代表クラスが楽しめる

ということで、2品とも大当たりでした。その後、家族にも食べさせたのですが、どちらも大好評。それぞれ2瓶ずつ購入してあったのですが、1週間も経たないうちに全部平らげてしまったほどでした。

これまで、「ご飯のおとも」といえば、なんとなく箸が進まず、白米が食べ切れない時に使う感覚だったのですが、『山口恵以子のめしのせ食堂』に登場する「ご飯のおとも」はハッキリ言って別格です。これさえあれば本当に何杯でも白飯をおかわりしたくなります。本当に、自分は今まで一体何を食べてきたんだ……と愕然としました。

めしのせの伝道師・長船クニヒコさん。本書の共著者です。

ところで、なぜこれほど『めしのせ食堂』でのアイテムが優れているかというと、それは、本作で登場する「ご飯のおとも」のセレクトを、お取り寄せグルメの達人・長船クニヒコさんが担当しているからでしょう。

長船さんは、日本の食文化に魅せられ、津々浦々の「ご飯のおとも」を食べ尽くしたお取り寄せグルメの専門家。脱サラして「おうちでご飯のお供展 おかわりJAPAN商店」という通販紹介サイト(https://okawarijapan-store.jp)を開設してしまうほどの、この道の達人なのです。ここ2~3年はテレビやラジオの情報番組などにも精力的に出演しています。ちなみに本書の小説内でも“めしのせの伝道師”としてなんと本名で登場。山口さんの心憎い演出です。

読んで心が満たされ、さらに食べても美味しい、何度もリピートして読みたくなる本でした。小説をしっかり読み込んでから「ご飯のおとも」をいただけば、より思い入れたっぷりに絶品グルメが楽しめます!

『山口恵以子のめしのせ食堂』基本情報

『山口恵以子のめしのせ食堂』
著:山口恵以子、長船クニヒコ
定価:1,650円(税込)
発売日:2024年1月24日
特設サイト:https://www.shogakukan.co.jp/books/09386711

文/齋藤久嗣

 

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