江戸時代から続いてきた鮨、天ぷら、蕎麦、そして昭和の時代に発達した焼き鳥は東京の食文化。老舗から新店まで、足を運びたい店を紹介する。

焼き鳥と水炊きで伊達鶏の旨みを満喫する

鳥とみ 池尻大橋

左から、タレで味わうもも、和芥子をのせたせせり、アスパラガスは塩味。焼き鳥は鶏肉の甘みがあり、ほどよい弾力。串は1本ずつ提供される。ワインはグラス1000円~。

『鳥とみ』の開業は平成30年。東京の焼き鳥の人気店『鳥しき』等で修業を積んだ土屋宝さん(51歳)がひとりで切り盛りする、カウンター8席のみの穴場的な良店である。メニューは、自身の好物である焼き鳥と水炊きの2本柱で提供するコースのみ。使う鶏肉は、「焼いても煮ても旨い」と土屋さんが太鼓判を押す福島県の伊達鶏一筋だ。

コースでは串は7本提供され、そのうち1~2本は旬の野菜。塩で味わう手羽は定番で、香ばしい皮目と引き締まった身の旨みに感嘆。
コースから手前は前菜の温かいポテトサラダ。鶏そぼろ、ポテトチップスを合わせた斬新な一品。奥は肉味噌で味わう箸休めの野菜。

「焼き鳥の醍醐味は、火入れ加減を想像しながら炭の香りをまとわせていくその過程にあります」

そう語る土屋さんは、紀州備長炭を熾し、巧みな団扇使いで風を送りながら、肉の弾力が残るよう焼き上げる。基本の味はタレか塩だが、焼きながら素材ごとに最適な油を塗るのが土屋流。たとえばハツ(心臓)には胡麻油を塗って香りを補い、野菜はオリーブオイルで風味を高める。起伏の富んだ味わいに、ワインや日本酒が進む。

独学で完成させた水炊きも秀逸。

「伊達鶏のガラを丁寧に下処理し、火加減を微調整しながら6時間ほどかけて炊きます」(土屋さん)

丁寧に炊かれたスープは、濃厚で香り高くキレがよい。つくねや、クレソンなど味の濃い野菜を楽しみ、締めの雑炊あるいは麺まで堪能できる。滋養たっぷりのコース料理に舌鼓を打ちたい。

コースの水炊き。手羽元の煮えた濃厚なスープで、軟骨入りのつくね、皮を炙あぶった鶏もも肉、クレソンや豆苗を客自身で煮て楽しむ。

鳥とみ

東京都世田谷区池尻1-11-8 和光ハイム105
電話:03・6805・5283
営業時間:18時~21時30分(最終入店)
定休日:日曜、ほか不定休あり 8席、要予約。コース8800円。

東急田園都市線池尻大橋駅、三軒茶屋駅よりともに徒歩約15分。池尻小学校交差点からすぐ。

※この記事は『サライ』本誌2023年9月号より転載しました。取材・文/安井洋子、浅妻千映子 撮影/平松唯加子、福田栄美子

 

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