活のズワイガニを2倍楽しむ

生きた蟹を自ら茹でて旨い料理に仕立てる。そのために欠かせない3つの肝は「脚などの欠損がないこと。蟹ビル(※ウオビル科の生物の卵。この数が多いほど蟹の身の詰まりがよいとされる。)があること。塩分濃度3%で茹でること」と、日本料理教授の西澤辰男さん。 

和食は素材ありき。ボイル蟹は手軽だが生きた蟹に勝るものはなし。また、脚の欠けた蟹は安価だが、「茹でたときに欠損した隙間から湯が入り、蟹みその味が薄まります。甲羅に蟹ビルがいれば、身の詰まり具合に期待できます」と、素材選びが旨さへの第一歩だ。

よい蟹を入手できたら最良の茹で方を。蟹はアクが強く、生半可に茹でるとアクがまわり色が悪くなる。それを防ぐには必ず塩分濃度3%の水を沸騰させてから茹でること。塩分は色艶をよくするだけでなく身を引き締め、高温加熱による旨み成分の流出を防ぐ。茹でればあとはさばくだけ。面倒そうだが関節を切り、殻を開き丁寧に外せば大丈夫。自分で茹で、さばいた蟹。達成感もひとしおだ。

【手順1】締める

真水を使うべし

真水の入ったボウルに、甲羅を下にして蟹を入れ、蟹の口が動かなくなるまで10〜15分程度、放置する。生きたまま茹でると暴れて危険で、かつ破損する可能性があるため必ず締めてから茹でる。

【手順2】茹でる

落としぶたを忘れるべからず

1.蟹の表面をタワシで洗う。甲羅の蟹ビルは落としても落とさなくてもよい。

2.濃度3%の塩水を沸かし、甲羅を下にして鍋に入れる。ふたたび沸騰したら落としぶたをして、さらに中火にかける。

【茹で上がり】

茹で時間の目安

甲羅幅が10cmの場合は20分、13cmの場合は23分、15cmの場合は25分ほど茹でる。

【手順3】さばく

ハサミを駆使するべし

1.脚を切り落とす

甲羅と脚・爪(つめ)を分ける。脚の付け根の節の柔らかい部分にハサミを入れて切り落としていく。脚8本と爪2本を切り落としていく。
蟹の脚一本一本をさばくには蟹バサミが便利。一般のキッチンバサミでもよい。

2.ハカマを外す

蟹の胴の下にあるハカマを手で開き、親指を入れて引っ張るようにして外す。外したハカマにも蟹みそがあるので丁寧に取る。
ハカマを外したところに指を入れ甲羅を外す。甲羅はみそが流れ落ちないように受け皿代わりにする。
脚の付け根に詰まったみそは、指で押して取り出す。口は取り除く。
甲羅の中のガニ(エラ)は捨てる。

3.胴体を三等分に切り分ける

みその詰まった部分は避け、両側に包丁を入れて胴体を三等分に切り分ける。両側の胴それぞれに蟹身がたっぷりついているので、縦に包丁を入れ、さらにふたつに切り分け中の身を取りやすくする。中央のみその詰まった部分はそのまま外した甲羅に盛り付ける。

4.脚を手で折り、身を抜く

脚の太い部位の関節を折り、下の脚を外す。太い脚の殻の中に身がきれいに残るのはしっかりと身が詰まった蟹の証拠。外した下の脚先も関節を折り、ゆっくりと身を抜いていく。

5.脚の両側面にハサミを入れる

蟹身を取りやすいように脚の殻を開くため、脚の両端から5mmほど切り落とす。
脚の両側面にハサミを横一直線に入れ、殻を切り離す。切った殻がふたになるようなイメージで行なう。
最も蟹身が詰まった爪も関節から切り離し、脚と同じく切った殻がふたになるようハサミを入れる。関節からハサミを入れると切りやすい。蓋となる殻の裏についている身も蟹スプーンなどで丁寧にはずして身にまとめる。
残りの脚と爪も同じようにさばく。

【完成】

蟹のみそ、胴、脚、爪と切り分けると完成だ。

●指導 西澤辰男さん
(服部栄養専門学校日本料理主席教授・50歳)

昭和47年生まれ。服部栄養専門学校卒業後、『東京吉兆』へ。12年の勤務ののち、平成16年より日本料理を指導。ドラマや情報番組での料理指導など幅広く活躍している。(『吉兆』の吉は「土」の下に「口」)

取材・文/すずきたけし 撮影/寺澤太郎
※この記事は『サライ』2023年2月号より転載しました。

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