時季になったら新幹線に乗り、バスを仕立てて、空路を辿り日本中から産地めがけて人が動く。わざわざ食べに行きたいほどの美味、それが「蟹」。今年はどこへ、出かけようか。

専用籠で丁寧に漁獲する冬の海で育つ独特の甘み
毛ガニ 北海道白糠町

『ホテルまつや』の食事処・旬料理『心』で味わえる毛ガニ。手前は茹で蟹1杯1万6500円~。ふたりで1杯注文する客が多いという。奥左は毛ガニと玉ねぎや茸などを卵と合わせて焼いた黄金焼き、右は甲羅を使い焼き上げたグラタン各2200円。夕食はコース料理ひとり4400円~で、前日までに予約、毛ガニの注文は3日前までに予約。

北海道を代表する蟹といえば、毛ガニである。オホーツク海と太平洋沿岸に分布し、春から夏は北海道最北部の宗谷から網走にかけて、夏は南西部の胆振、秋から冬は東部の釧路や十勝が漁獲地となり、一年を通して水揚げされることが特徴である。

近年、毛ガニの産地として知名度を上げている釧路近郊の白糠町へ向かった。白糠港の水揚げは9月から始まり長くて1月中旬頃まで、漁獲許容量に達するまで前・中・後期の3期に分けて操業される。漁場となる沖合は蟹が好む砂泥地で、海水温が下がる冬に向けて操業されるため、身が締まった甘みの強い毛ガニが獲れる。

白糠港に帰ってくる毛ガニ船。深夜の3時に出港し、朝10時前後に帰港。取材時は2隻での操業で、水揚げは約200kgだった。

さらに特筆すべきは、専用籠を用いる毛ガニ籠漁法を取り入れていることだ。これは、1本のロープに10m間隔で100個ほどの籠を括り付け、餌となる烏賊を入れて海中に設置。この仕掛けを複数、漁場に仕掛ける。この漁法では毛ガニを傷つけることなく、生きたままの最良の状態で捕獲できる。

「昔は底曳網漁でしたが、毛ガニのみを漁獲する蟹籠漁は資源保護の観点からも優れています。また雌と甲長が8cm未満の雄は海に帰します。近年は海水温が上昇したせいか、さらに沖で漁をしないといけないので、大変です」と話すのは、白糠漁協毛ガニ籠部会長の山田明さん(63歳)。

漁獲した毛ガニは漁協のスタッフがすぐに状態を確かめ、大きさごとに選別し、仲買人のもとへ運ばれる。そして塩茹で後急速冷凍で鮮度を保ったまま、年末年始を中心に贈答品として全国に発送されるという。

白糠漁協毛ガニ籠部会長の山田明さんはこの道40年のベテラン。手にしているのは毛ガニ籠で、これを約11km先の沖合に仕掛ける。
水揚げされた毛ガニは脚折れの有無などを確認し、甲長が9cm以上10cm未満の中サイズ、10cm以上の大サイズに分けられる。

シンプルに浜茹でを楽しむ

JR白糠駅近くにある『ホテルまつや』で毛ガニの味を確かめる。同ホテルの食事処では特別注文で茹で蟹やアレンジ料理が楽しめる。

塩茹でされた毛ガニは900gほどの堂々たる姿。ズワイガニやタラバガニに比べると体が小さい毛ガニだが、白糠産は概して大きく、胴や脚には盛り上がるほどの身が詰まっている。弾けるような身を口に運べば、凝縮された甘さに驚き、さらに濃厚な蟹みそを絡めると、深い旨みが口内を占領する。ホワイトクリームを使ったグラタンや、卵を用いた黄金焼きといった料理でも、毛ガニの存在感を強く感じることができる。

食べ応えのある毛ガニに脱帽し、北の海の恵みに感謝した。

ホテルまつや

清潔感のあるツインの客室。ほかにシングル、和室もある。

北海道白糠郡白糠町東2条南1丁目1-11
電話:01547・2・2211 
チェックイン15時、同アウト10時
料金:1泊素泊まりひとり6500円~、朝食700円、夕食1600円~ 23室。

『ホテルまつや』はJR白糠駅から徒歩約1分。釧路空港から、車で約20分。

取材・文/関屋淳子 撮影/竹崎恵子
※この記事は『サライ』2023年2月号より転載しました。

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