チーズケーキは、いつから日本人が好む人気の洋菓子となったのか。「レア」「ベイクド」「スフレ」の3大分類の源流を訪ねた。

安井寿一のスフレチーズケーキに挑む。きめ細やかで軽やかな口当たり

トシ・ヨロイヅカ(東京)|おやじのチーズケーキと呼ばせてください

きめ細かな食感のスフレケーキは、どこか懐かしい優しい味がする。ラムレーズンの香りがチーズと一体になり鼻腔をくすぐる。
メレンゲをクリームに投入。同じ分量で混ぜても焼成時に割れることもあり、均一に焼けるようになるまで試行錯誤を続けた。

1960年代後半のチーズケーキの普及期に、日本で開発されたのがスフレタイプだ。卵白を細かく泡立てたメレンゲを使って焼いたスフレケーキは、ふんわりとした食感が特徴、チーズケーキに新しい領域をもたらした。

開発者は大阪にあったホテルプラザの製菓料理長、安井寿一(1937~87)である。「タルト・オ・フロマージュ」と命名され昭和44年から提供された。安井氏は弟子たちから「おやじ」と慕われ、洋菓子界に欠かせない多くの人材を育てた。

その「おやじのチーズケーキ」の復刻に挑戦したのが、洋菓子店『トシ・ヨロイヅカ』のオーナーシェフ、鎧塚俊彦さん(56歳)だ。

鎧塚さんはこう語る。

「私は安井さんに直接指導を受けたことがない、孫弟子になります。私にとって憧れの、神様のような人です。そんな安井さんの精神を引き継いでいきたい。その原点のひとつがチーズケーキなのです」

何度も失敗を繰り返し、昨年製品化にこぎ着けた。品名の「呼ばせてください」には、鎧塚さんの遠慮と、安井寿一のケーキにぎりぎりまで近づきたいという、菓子職人としての矜持が入り交じる。

鎧塚俊彦さん。欧州各国でパティシエとして勤務後、2002年に帰国。洋菓子店『トシ・ヨロイヅカ』のオーナーシェフ。

●トシ・ヨロイヅカ

トシ・ヨロイヅカ オンラインショップ https://shop.cake-cake.net/ToshiYoroizuka/
※店舗での販売はしていない。

取材・文/宇野正樹 撮影/多賀谷敏雄

※この記事は『サライ』本誌2022年4月号より転載しました。

 

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