チーズケーキは、いつから日本人が好む人気の洋菓子となったのか。「レア」「ベイクド」「スフレ」の3大分類の源流を訪ねた。
レアチーズケーキと生クリームが融合した爽やかな甘さに若者は魅せられた
トップス(東京)|チーズケーキ
(*)チーズケーキの種類と価格は取材時(令和4年1月)のもの。3月末に種類と価格の改訂が予定されています。
昭和39年(1964)、東京・赤坂の旧TBS会館内に『トップス』は開店した。当時は珍しかったアメリカンタイプの造りで、気軽に立ち寄れて食事とデザートが楽しめるレストランとして多くの人に愛された。場所柄、芸能人の利用が多く、『トップス』でデートをするのは若者の憧れだった。この店でチーズケーキの味に初めて触れた読者もいることだろう。現在は創業地に店舗はないが、今でも「赤坂トップス」と呼ばれることが多い。
レストランで提供されたデザートのチョコレートケーキはすぐに評判となり、店頭でも販売されることになった。そして、ケーキの第2弾として開店の翌年に登場したのが、生タイプのレアチーズケーキだ。当時はまだチーズそのものが一般には珍しい時代、チーズケーキを販売する店も数えるほどだった。そこにレアチーズケーキという新しい味を、いち早く提供したのが『トップス』だった。
レアチーズケーキ誕生の舞台裏を、同社営業部の瀧本小春さんに聞いた。
「創業者は、『トップス』の開店前に1年の3分の2を海外で過ごし、料理や菓子の研究に費やしていました。なかでもヨーロッパでの滞在中に、チーズケーキの食文化に触れたのではないかと思います。帰国後に料理人と一緒に試行錯誤を繰り返しながら生み出したのが、当社のチーズケーキです」
チーズケーキの主材はクリームチーズだ。『トップス』では当初よりデンマーク産を使う。コクがあるのにあっさりしていることと、柔らかく加工がしやすいことが使い続けている理由だ。
「当時は輸入クリームチーズが高価でしたので、ほかの食材で伸ばして使うことが多かったようです。しかし、創業者と料理人は材料に手を加えることはしませんでした。価格や仕入れの手間を惜しまず、創業者が思い描くチーズケーキの味を追求したのです」(瀧本さん)
変わらぬ味を守り続ける
チーズのコクとほのかな酸味が効いたチーズケーキは、見た目よりあっさりと食べられ、日本人の味覚に合った。売り出し直後からレアチーズケーキは評判となり、今も『トップス』の看板商品として、チョコレートケーキとともに店のショーケースに並ぶ。外観もレシピもほどんど変わらず、発売当時の味を守り続けている。
●アトリエ&カフェ トップスセンガワ
東京都調布市仙川町1-48-5 クイーンズ伊勢丹仙川店2階
電話:03・6279・6381
営業時間:10時〜20時
定休日:クイーンズ伊勢丹仙川店休館日
交通:京王線仙川駅より徒歩約3分 30席。
販売店についての問い合わせ先:03・3710・2161 ※取り寄せ不可。
取材・文/宇野正樹 撮影/宮地 工
※この記事は『サライ』本誌2022年4月号より転載しました。