おしゃべりする、ぼーっとする、読む、学ぶ、考える、俗世間の塵を払う──そこは人間にとって大切なものに満ちた場所。喫茶店でしか出会えない“普段着の京都”をご案内します。

70年余の歴史が伝える京都の喫茶文化の系譜

『六曜社』創業地でもある地下店。昭和44年にバー『ろくよー』に改装。昭和61年から昼の喫茶営業を開始。

『六曜社珈琲店』の歴史は、創業者の奥野実が旧・満州で開いた屋台コーヒー店に始まる。帰国後、『コニーアイランド』として開業し、屋号を変えて繁華街に移転。以来、70年が経つ。

当初、地下のみだった店は、後に1階を喫茶、地階をバーにして営業。学生運動の時代には、「東の風月堂、西の六曜社」と称され、反体制の若者の熱気に満ちていた。その中には、若き日のフォークシンガー・高田渡や、『二十歳の原点』で知られる高野悦子らの姿もあり、全国に知られる名店となってゆく。

自家焙煎店のあるべき姿

「ハウスブレンド」500円をはじめブレンド2種、ストレート約10種。「自家製ドーナツ」160円との取り合わせが人気。

音楽活動をしていた2代目の奥野修さん(68歳)が、地下で自家焙煎コーヒー店を始めたのは、昭和61年のこと。修さんは評判の店を飲み歩き、東京・山谷の『カフェ・バッハ』との出会いで自らの目指す方向を確信した。当時は閉鎖的だった自家焙煎の世界で、地元密着の雰囲気を持ち、焙煎・抽出技術をオープンにしていた『カフェ・バッハ』は異彩を放っていた。

自家焙煎店のあるべき姿を体現した奥野さんの店は、やがて若い世代の拠り所となり、奥野さんの薫陶を受けた焙煎士たちが今、京都の新たなコーヒー文化を切り拓いている。

同業者からも篤い支持を得る奥野修さん。マスターの仕事の傍ら、シンガーソングライターとしても活動する。

6年前に3代目の薫平さん(37歳)が店に入り、「100年続く店」を掲げて家業に勤しむ。時を経ても変わらぬ“憩いの場”が日常の中にあること。その幸福を感じられる一軒だ。

1階ではコーヒーはブレンドのみ、初代の流儀を継ぐネルドリップで提供する。かつては相席も当たり前だったテーブル席の空間は、気取らぬ街の応接間の趣。

六曜社珈琲店
京都市中京区河原町三条下ル大黒町40-1
電話:075・221・3820
営業時間:1階8時30分〜22時30分、地下12時〜18時(18時〜23時はバー)
※最終注文:1階22時、地下(喫茶)17時30分
定休日:水曜
交通:京阪本線三条駅、地下鉄東西線京都市役所前駅より徒歩約5分

【立ち寄り情報】
・三条大橋まで徒歩で約3分。東海道・中山道の終点。約500年前、豊臣秀吉が改修した際の擬宝珠が残る。
・辰巳大明神まで徒歩約10分。祇園・白川の畔ほとりにあり、芸舞妓から伎芸上達の信仰を集める小社。
・建仁寺まで徒歩約15分。栄西禅師開山の臨済宗の古刹。

取材・文/田中慶一 撮影/塩﨑 聰
※この記事は『サライ』2021年10月号別冊付録より転載しました。

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