『サライ』10月号の大特集は「選りすぐりの京都」。日本の大乗仏教の基礎をつくった僧・最澄ゆかりの古寺を美しい紅葉風景とともにご案内します。
また、京都を訪れる楽しみのひとつである美食は「カウンター」に注目。今年オープンした新進気鋭の店を中心に、和食、フレンチ、鮨に天麩羅と、秋の味覚を堪能できる名店をご紹介します。
今回は、「カウンター料理の醍醐味」の中から、『つろく』を紹介します。
つろく 中京区
御所の南側にあたる路地裏に、2020年3月に開業したのが、ここ『つろく』である。正統派でありながら、新鮮な表現を料理に加えることで人気を博す『游美』の姉妹店だ。
“つろく”とは、京言葉でつり合いが取れていることの意。料理と値段はもちろんのこと、食材と調理法、さらには店と客とが“つろく”することを信条としている。
料理長に抜擢されたのは、惜しまれつつ閉店した東京・新橋の名店『京味』で修業を積んだ上田健登さん(27歳)。修業先では、お決まりのコース料理を手掛けていたこともあって、一品料理の組み立て方や仕込みには、苦労することもあったという。
「お客様の好みを測り、知ることの大切さを実感しました。一品料理だからこそ、一皿ごとの質が求められます。他にはない味、食材の組み合わせを創り上げるよう心掛けています」
意外性のある上質和食
40品ほどの料理が並ぶ品書きには、桜海老を合わせたポテトサラダやトマトじゅんさいといった、ありそうでなかった料理が目立つ。とはいえ、季節のお造りや焼き物、蒸し物など、定番の和食も揃っているから京の和食を満喫できる。
そんな中、名物との声もあるのが、ぐじ(甘鯛)の松笠焼である。
皮目を水に浸した後、油を用いて焼き上げる調理法が和食としては特徴的。パリッとサクサクしたうろこの食感が心地よく、一度味わうと病み付きになる逸品だ。
初秋以降は、ごぼうのすり流しの餡をたっぷりかけた真丈や、すっぽんの茶碗蒸しなど、温かな料理も続々登場する。
「迷ったら食べたい食材や分量も含めて気軽に相談してください」
と上田さん。料理人とのやりとりも楽しんでほしいと話す。
日本酒と肴で和んだ後は、土鍋で炊くつやつやの白ご飯や魳(かます)ご飯など季節のご飯で締めたい。
流線形のカウンターの入口側には、靴を脱いで寛げる小上がりもあり、子どもと一緒でも楽しめる空間になっている。子ども連れでは訪ねられない店が多い中、家族でゆったりと食事ができることでも評判を呼んでいる。
つろく
京都市中京区松屋町51 電話:075・275・3926 営業時間:17時~23時(最終入店22時30分) 定休日:日曜 料金:予算6000円~ カウンター14席、要予約。交通:地下鉄烏丸線・東西線烏丸御池駅より徒歩約5分