京都と競い合い発展した菓子には江戸の面影を残す都会の紅葉が似合う
古来、和菓子は茶の湯の美意識の影響を受け、日本の四季の移ろいや自然の美を表現してきた。とりわけ、紅葉の彩りは数多くの美しい和菓子を生み出した。今年は、新型コロナウイルスの影響で、旅に出かけることが難しい。そこで、和菓子を愛でながら、紅葉に思いを巡らせ、秋の風情を味わいたい。
徳川幕府により開かれた江戸。和菓子も町づくりとともに発展した。江戸初期、築城や水路の敷設などで肉体を酷使する人々が多かったことから、腹持ちのいい団子や大福が流行したという。江戸中期、8代将軍・徳川吉宗の時代になると、砂糖の生産を奨励したこともあり、京都の京菓子に対して、江戸の上菓子が生まれ、競い合うように発展。京都の菓子屋も江戸に進出し、幕府をはじめ大名や旗本などの菓子の需要を支えた。
江戸城内で開かれた嘉祥の儀
平安中期に始まった招福・厄除けの行事に嘉祥の儀式がある。6月16日に、16の数に因む菓子や餅などを神前に供えた。江戸幕府も重要な行事と位置づけ、この日は饅頭や羊羹など約2万個が城内の大広間に並び、将軍から大名らへ下賜された。この日は、庶民も大いに和菓子を食べたという。
東京には六義園や小石川後楽園のような江戸の大名庭園が今も残っている。紅葉の時期になると松の緑と楓の紅が交差し、都会のなかとは思えぬ幽玄の世界を感じさせる。大名たちと同様に、今に残る庭園の紅葉を愛でながら、和菓子を味わってみてはいかがだろう。
萬年堂本店
銀座で愛される粋な色遣いの菓子
取り寄せ:可。オンラインショップ http://ginmannendou.shop24.makeshop.jp/ 電話:03・3571・3777 東京都中央区銀座5-8-20 電話:03・3571・3777
とらや
室町後期からの老舗 秋の華やぎをいただく
取り寄せ: 照紅葉のみ可。オンラインショップ https://www.toraya-group.co.jp/onlineshop/ 電話:0120・45・4121 赤坂店: 東京都港区赤坂4-9-22 電話:03・3408・2331
花月堂本店
江戸和菓子の心意気を伝える下町の名店
取り寄せ:可。電話:03・3872・8830 fax:03・3875・1996 東京都台東区根岸5-16-12 電話:03・3872・8830
取材・文/関屋淳子 撮影/市川 傅(風景)、植野 淳(和菓子) スタイリスト/新田亜素美