取材・文/池田充枝
今を遡ること400年、豊臣秀吉により本願寺法主の座を奪われた教如(きょうにょ、東本願寺第12代法主)に対し、旧東本願寺寺地を与え、東西分立を強く勧めたのが徳川家康だった。そんな家康と教如との盟友ともいえる信頼関係から生まれた東本願寺には、家康ゆかりの品々が多く遺されている。
その京都・東本願寺に伝わる徳川家康ゆかりの貴重な品々が、いま東京・荒川区にある町屋光明寺で特別公開されている(~2018年5月6日まで)。家康下賜の馬具、軍扇や貴重な書簡など、関東初公開となる品々も出品されている。
本展の見どころを、町屋光明寺住職の大洞龍徳さんに伺った。
「このたび当寺の東京御廟本館落慶にともない、東本願寺と縁の深い家康公ゆかりの品々を、京都の本山から特別に借りだして公開展示できることになりました。
全体を通して言えるのは、家康公をはじめ、多くの文化人・学者・政治家らが本願寺を舞台に交流した証となる品が多数あることです。
安土桃山時代から江戸時代にかけて活躍した教如上人が家康公から拝領した《葵御紋付團扇(あおいごもんつきうちわ)》《椶櫚蒔絵繪鐙(しゅろまきえあぶみ)》《椶櫚蒔絵繪鞍(しゅろまきえくら)》は、関ヶ原合戦(1600年)前夜、小山に在陣中の家康公と面談した際に餞別として贈られたものです。このときに、教如上人は石田三成挙兵の知らせを家康公にもたらしたと伝えられています。
また、《家康公御消息(いえやすこうごしょうそく)》は、家康公から本願寺に対して出された指示書で、京都に入る織田信雄の処遇について書かれています。これは大坂冬の陣における信雄の徳川方への転身を裏づけるものではないかと言われています。
《東照宮御廟之霊牌(とうしょうぐうごびょうのれいはい)》は、かつて東本願寺内に存在した東照宮に祀られていた徳川幕府歴代将軍の位牌です。この中には夭折し“幻の第11代将軍”といわれた徳川家基(とくがわ・いえもと)の位牌も含まれています。
そして、徳川家と本願寺の強い結びつきを特に感じさせるのが《御五条袈裟(おんごじょうげさ)》です。これは、徳川家の葵紋と大谷家の牡丹紋が交互に存在する非常に珍しい袈裟で、幕末の幕府劣勢の時期に作られていることから、本願寺が幕府を応援するという意思が織り込まれている宝物といえます」
関東初公開となる、徳川家ゆかりの貴重な寺宝が東京で拝見できる、またとない機会だ。このGW中、ご興味あればぜひお運びを。
【開催要項】
町屋光明寺 落慶記念『本願寺・寺宝展―「東本願寺と江戸幕府」』
会期:2018年4月23日(月)~5月6日(日)
会場:町屋光明寺 東京御廟本館 久恩殿
住所:東京都荒川区荒川7-5-8
電話番号:03・6806・5394
http://www.tokyogobyo.jp/
入場時間:10時より17時まで(受付16時30分まで)
拝観無料
取材・文/池田充枝