取材・文/池田充枝

奈良・薬師寺は法相宗(ほっそうしゅう)の大本山。その創建は、白鳳時代に天武天皇により発願(680年)、持統天皇により本尊開眼(697年)、更に天武天皇の御代に飛鳥の地に堂宇の完成をみました。その後、平安遷都(710年)にともない、718年に現在地に移されたという、古刹中の古刹です。

数多くの国宝や重要文化財を有する薬師寺では、このたび、奇想の画家として注目されている長沢芦雪(1754-99)の代表作であり、また元禄期に奈良で多くの画業を残した明誉古かん(石扁に間)(みょうよこかん)が富士図の絵筆をとっていることでも知られる《旧福寿院障壁画》の4年余りかけた修理が終わり、話題となっています。

長沢芦雪筆《旧福寿院障壁画(松虎図)》〔奈良・薬師寺蔵〕

長沢芦雪筆《旧福寿院障壁画(松虎図)》(部分)〔奈良・薬師寺蔵〕

この修理完成を記念して、薬師寺の二大名画・旧福寿院障壁画と板絵神像が同時公開される展覧会が、奈良国立博物館で開かれています(~2018年3月14日まで)。

旧福寿院障壁画33面を一堂に披露するとともに、同じく近年本格修理と復元模写制作が行われた重要文化財の板絵神像を展観しています。

堯儼筆《板絵神像(北殿第三間)》〔重要文化財 奈良・薬師寺蔵〕

本展の見どころを奈良国立博物館の学芸部教育室長、谷口耕生さんにうかがいました。

「奈良市西ノ京に広大な伽藍を誇る名刹・薬師寺には、1300年余りの長い歴史とともに数多くの文化財が伝えられてきました。

その代表格である板絵神像(重要文化財)は、薬師寺の鎮守、休ヶ丘八幡宮に長らく祀られてきたもので、南都の絵仏師・堯儼(ぎょうごん)が永仁3年(1295)に絵筆を執った垂迹(すいじゃく 仏・菩薩が衆生救済のため仮の姿であらわれること)美術の名品として知られています。近年実施された本格修理の知見をもとに復元模写の制作が進められ、神々の端麗な姿とともに往時の豊麗な彩色がよみがえりました。

また、薬師寺の旧塔頭福寿院に伝来した障壁画は、「奇想」の画家として近年注目を集める長沢芦雪の自由闊達な画技が生み出した傑作です。平成25年(2015)から足かけ4年余りにわたる修理が施され、芦雪の筆力が遺憾なく発揮された大画面の全貌を初めて公開することが可能となりました。

本展は、これら薬師寺の二大名画の修理が完成したことを記念し、その魅力あふれる世界を広く紹介するものです。信仰の中で守り伝えられてきた絵画の彩りを心ゆくまで堪能していただき、文化財修理の意義を再認識する場となれば幸いです」

全33面の大迫力の障壁画を間近で観賞できる展覧会です。ぜひ足をお運びください。

【開催要項】
修理完成記念 特別陳列 薬師寺の名画-板絵神像と長沢芦雪筆旧福寿院障壁画-
会期:2018年2月6日(火)~3月14日(水)
会場:奈良国立博物館 西新館
住所:奈良市登大路町50 (奈良公園内)
電話番号:050-5542-8600(ハローダイヤル)
http://www.narahaku.go.jp/
開館時間:9時30分から17時まで、金・土曜日は20時まで、2月8日・11日~14日は20時30分まで、2月9日・10日は21時まで、3月1日・4日~8日・11日・13日・14日は18時まで、3月12日は19時まで(いずれも入館は閉館30分前まで)
休館日:2月19日(月)・26日(月)
※同じ観覧券で、同時開催の「お水取り」展も観賞できます。

取材・文/池田充枝

 

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