『羅生門』や『河童』などで知られる芥川龍之介(1892~1927)は、旅が好きで、北海道から九州まで足を運んでいます。

また、当時としては珍しく海外旅行も体験し、中国各地を訪れました。

中国旅行中の芥川(左) 提供/日本近代文学館

山梨・長野への徒歩旅行、失恋の傷を癒した松江での日々、東北から北海道にかけての講演旅行など、各地での見聞は芥川の生活や作品に様々な影響を与えました。

芥川の生誕130年にあたる今年、芥川の旅の軌跡を辿る展覧会が開かれています。(6月19日まで)

芥川が書いた松江での見聞を読みこんだ俳句草稿 山梨県立文学館蔵

本展は、初展示品も含めた館蔵コレクションを中心に芥川龍之介の旅の様子を紹介します。
本展の見どころを山梨県立文学館の学芸員、保坂雅子さんにうかがいました。

「芥川が16歳の夏に友人と二人で出かけた8泊9日の旅は、東京を出発し、山梨の丹波山、塩山、甲府を経て、長野の上諏訪、小諸、軽井沢などを巡りました。その旅の様子を記した日記に、甲府の景勝地の昇仙峡について「昇仙峡は流石にいい。水の青いのと石の大きいのとは玉川にも及ばないようだ」と友人にあてた手紙に綴られています。

「日誌」より 芥川が東京府立第三中学校4年生・16歳の夏休みに書いた日記 山梨県立文学館蔵

このほか、「「奈良」と云ふ名を聞いただけでも、もう自分は限りないゆかしさを感ぜずにはゐられない」など古都への賛辞が書かれたノート、千葉県一宮滞在中に夏目漱石から送られた長文の手紙、文学全集宣伝のために講演旅行で訪れた東北・北海道の印象を記した最晩年の原稿、中国での体験を基に書かれた小説「湖南の扇」の草稿など、自筆原稿を中心に約60点を展示。

1919(大正8)年5月、初めて長崎を訪れた際に 左から菊池寛、芥川 提供/日本近代文学館

旅先にたたずむ芥川の姿を思い、旅への憧れを呼び起こして頂けたら幸いです」    

芥川龍之介の自筆の草稿や日誌などを間近に見られる展覧会です。芥川の息遣いを見に、ぜひ会場に足をお運びください。

1920(大正9)年8月、宮城県青根温泉に約1か月逗留した時の「御宿料記」 山梨県立文学館蔵

【開催要項】
芥川龍之介 生誕130年 旅の記憶
会期:2022年4月23日(土)~6月19日(日)    
会場:山梨県立文学館 展示室C
住所:山梨県甲府市貢川1-5-35
電話:055・235・8080
開館時間:9時から17時まで(入室は16時30分まで)
休館日:月曜日(ただし5月2日は開館)
公式サイト:https://www.bungakukan.pref.yamanashi.jp
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照

取材・文/池田充枝

 

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