取材・文/池田充枝
今からおよそ900年前に制作されたとされる「源氏物語絵巻」。当初は54帖すべてが絵画化されたと思われますが、現存するのは徳川美術館所蔵(徳川本)の詞書16段・絵15図と五島美術館所蔵(五島本)の詞書4段・絵4図のほかに諸家に伝わる断簡も含めても20帖で、大半は失われたとみられています。
900年を経て、徳川美術館では経年劣化を防ぐための修復作業が進められ、令和2年(2020)、すべての詞書と絵の修復が完了しました。
このたび、修復完了を記念して「国宝 源氏物語絵巻」の全巻が公開されます(12月12日まで)。
本展の見どころを、徳川美術館の学芸部部長代理、吉川美穂さんにうかがいました。
「国宝『源氏物語絵巻』は、『源氏物語』を絵画化した現存最古の物語絵巻で、平安の王朝文化を象徴する名画の一つとして世界的にも有名です。江戸時代、尾張徳川家に三巻の巻物として伝わりましたが、経年劣化で折れやシワが生じており、開閉のたびに絵の具が剥落するおそれがありました。昭和七年(1932)、これを危惧した尾張徳川家十九代義親(よしちか)が保存と公開を目的として、田中親美(しんび)に依頼し、額面装に改装するという大英断を下しました。
当時としては最善の判断でしたが、次第に額面装による弊害も出てきたため、平成二十八年(2016)から5年にわたる詞書の修復と巻子装に戻す改装が行われました。
令和二年(2020)春に全十五巻の巻子装への修復が完了したことを記念して、前後期で展示替を行いながら、全巻を公開いたします。詞書と絵が互いに響き合う絵巻特有の世界観をお楽しみください」
修復の工程も詳しく紹介されます。ぜひ会場でご覧ください。
【開催要項】
修復完了記念 館蔵全巻特別公開 国宝 源氏物語絵巻
会期:前期2021年11月13日(土)~30日(火)
<蓬生 / 柏木一 / 柏木三 / 竹河一 / 橋姫 / 早蕨 / 宿木二 / 東屋二>
後期12月1日(水)~12月12日(日)
<関屋・絵合 / 柏木二 / 横笛 / 竹河二 / 宿木一 / 宿木三 / 東屋一>
会場:徳川美術館 本館展示室
住所:名古屋市東区徳川町1017
電話:052・935・6262
開館時間:10時から17時まで(入館は16時30分まで)
休館日:月曜日
https://www.tokugawa-art-museum.jp/
料金:HP参照
アクセス:HP参照
取材・文/池田充枝