閉ざされた印象の強い藝大。
しかし、じつは一般にも門戸を開いたオープンな大学だった。
新たにできた施設をきっかけに、藝大を楽しんでみたい。
わが国の芸術教育機関の最高峰として、平山郁夫、坂本龍一をはじめ、名だたるアーティストを輩出してきた東京藝術大学(藝大)。その上野キャンパスに、教員や卒業生、現役学生の作品を展示、販売する「藝大アートプラザ」がオープンした。
作品のほとんどは、藝大生や職員、卒業生たちがアートプラザのために制作したもの。日本画、油画、彫刻、工芸など、ジャンルは多岐にわたる。
家庭でも飾りやすい大きさ、手頃な値段のものも多く、1万円前後の作品も並ぶ。漆塗りのぐい呑、ガラスのアクセサリーや金属の花器など、日常使いできるものもある。
大学と世の中との接点に
東京藝術大学学長の澤和樹さんは、次のように語る。
「大学には、教員や学生を世間から切り離し、教育研究に集中できる環境をつくる役割がありますが、一方でその研究成果を世の中に還元する必要もあります。
日本は経済的に困ったときには真っ先に文化の予算を削ります。そんな芸術の価値が実感されにくい状況のなかで、大学の研究成果を世に発信することは、結果的に才能ある学生や卒業生に活躍の場を提供することにつながると考えています。
藝大は一般の方からは遠い存在だと思われがちですが、これからは世の中との接点をもっと持っていきたいですね。アートプラザは、藝大の玄関口です。芸術を通して大学と一般の方、企業や地方自治体などを橋渡しするコミュニティ交流ゾーンとして効果的に活用していく予定です」
藝大を外に開く試みは他にもある。教科書でお馴染みの絵画、高橋由一『鮭』などを所蔵する大学美術館では、大規模な企画展が開催される。また、1100を超す座席数を誇る奏楽堂では、教員や学生によるオペラやコンサートも行なわれ、一部の演奏はハイレゾ音源でストリーミング配信している。学生といえども、狭き門をくぐり抜けて入学した優秀な奏者たち。演奏はプロ顔負けである。
ここで出会った作家・演奏家は、未来の大物アーティストになる可能性も秘めている。作品を見て買って、演奏を聴きに、気軽に藝大を訪れてみてはいかがだろう。
【藝大各学科の教員・卒業生・在学生の作品が購入できる】
【藝大アートプラザ】
東京都台東区上野公園12-8
電話:050・5525・2102
営業時間:10時~18時
定休日月曜
JR上野駅公園口、鶯谷駅南口より徒歩約10分。
京成上野駅、地下鉄上野駅より徒歩約15分。
地下鉄根津駅より徒歩約10分。
https://artplaza.geidai.ac.jp/
取材・文/藤田麻希 撮影/宮地 工
※この記事はサライ2018年11月月号より転載しました。
※値段はすべて税込みです。