「ライフキャリア」とはどういう意味でしょう? マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp)」で、ライフキャリアについて学び、知見を得ましょう。

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「ライフキャリア」という言葉を耳にしたことはあっても、具体的な意味や作成方法を知らない経営者は多いのではないでしょうか。

ライフキャリアを従業員に作成させることで、働くモチベーションが高まったりエンゲージメントが向上したりと、企業にとって多くのメリットがあります。

この記事ではライフキャリアの意味や必要とされる背景、作成手順を紹介します。企業に導入し、時代の変化に対応して人材の流出をおさえましょう。

ライフキャリアとは簡単にいうと、生活すべてのキャリアのこと

ライフキャリアとは、仕事のみならず、家庭生活や地域とのかかわり、プライベート(趣味やボランティア)など、生活すべてにおいて一生にわたり果たす役割や経験の積み重ねを指します。

人生には結婚や出産、体調不良や介護など、予期せぬ事態が起こるのも常です。その都度優先順位を決めながら自分らしく生きられるよう、自身のキャリアを決めることが重要です。

従業員はライフキャリアを意識することで、企業に属して成長する過程が自分のプランとどのようにつながるのかを、意味づけできるようになります。その結果、業務へのモチベーションが湧くようになり、成果を上げやすくなる可能性も秘めています。

職業や企業の役割などの「ワークキャリア」と、日常生活や社会的活動における「ライフキャリア」双方において、自分自身がどのようにありたいのかを考えるようにしましょう。キャリアプランを立てると、生活の満足度を上げることにつながります。

ライフキャリアが注目を集めている理由

ライフキャリアが注目を集めている背景に、年功序列や終身雇用の崩壊があります。

現代は変化が著しい時代であり、大企業へ勤めたら将来安泰というわけではありません。高齢になっても働きたいと考える人や、リスクを分散するために複業を検討している人が増えています。

また、ライフキャリアが特に注目されるようになったのは、ベストセラーになったイギリスの組織論学者リンダ・グラットン氏とアンドリュー・スコット氏の『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』(東洋経済新報社)や、政府が掲げた「人生100年時代構想」がきっかけでもあります。

とある海外の研究によると、2007年に日本で生まれた子どもの半数が107歳より長く生きると推計されています。このことから、スキル形成や働き方の変化に個人がしっかりと向き合っていく必要があるといえるでしょう。

ライフキャリアは「4つのL」から考える

「ライフキャリア」を提唱したサニー・S・ハンセン氏は著書『統合的人生設計(Integrative Life Planning)』のなかで、ライフキャリアには以下のように4つのLがあると述べています。

1.Labor(仕事)……仕事にて収入を得る活動
2.Learning(学習)……読書、研修への参加、通信教育などの自己啓発
3.Leisure(余暇)……趣味や遊び、社会的活動などの、上記3つに当てはまらない活動
4.Love(愛)……子育てや介護、ペットの世話など、大切な存在と過ごす活動

ハンセンは「ライフキャリアを考える際に、より全体的な視点を持ち、家庭や組織、社会における自分の立ち位置から果たす役割を見つけ出すべきである」と説明しています。

つまり、4つの役割それぞれを配分し、人生を豊かにしていくことが大切なのです。

企業がライフキャリアを支援する3つのメリット

ここからは企業がライフキャリアを支援するメリットを3つ紹介します。

1.視野が広くなる

ライフキャリアを意識すると、企業で使う業務知識だけでなく、自らの生活に生きる知識や経験も積もうと考えるようになります。

個人的に興味がある内容を学んでいるつもりでも、それが企業においても役に立つ知識やスキルであることは往々にしてあります。これまで持てなかったような、別の視点で物事の解決策を考えられるようにもなるでしょう。

ライフキャリアを描くと、学習の過程で新しい視点が得られたり、アイデアが創出されやすくなったりするのがメリットです。

2.人材流出を防げる

企業が従業員に対して望む成長やスキルの取得を、従業員も欲しているとは限りません。

なかには企業から指示された資格の取得や外部研修への参加で、自分の時間をなかなか割けず、自分の生活を優先するために離職してしまうケースもあるでしょう。

一方で企業が従業員のライフキャリアを把握していれば、従業員が求めるスキルと企業が求めるスキルをすり合わせられるようになります。その結果、無理のないペースでスキルを取得でき、企業への不信感が軽減されるでしょう。

3.モチベーションが上がる

ライフキャリアは自らが自分のために立てるものです。

上司から指示されて働くのではなく、人生をよりよくするために働くという意識のもとで仕事ができるようになります。社会における役割や使命を見据えたうえで働くと内発的なモチベーションが湧き、仕事に対して、より身が入るようになるでしょう。

このようにしてエンゲージメントが向上すると、組織の一員として仕事をまっとうする意識が高まります。

ライフキャリアレインボーとはライフキャリアを可視化するツールのこと

ライフキャリアを描く際には、ライフキャリアレインボーの作成が有効です。

ライフキャリアレインボーとはアメリカのD・E・スーパーが提唱した考えで、「キャリアは年齢や場面などのさまざまな組み合わせである」と定義した概念のことです。

こちらの概念では趣味や地域活動、家庭での役割などさまざまなキャリアを虹のように積み重ね、複数のキャリアを使い分けながら生活していると考えます。

ライフキャリアレインボーはライフステージと、ライフロール、年齢で表されます。

ライフステージは以下の5つです。

・成長段階(0〜15歳)……家庭や学校での生活で自分自身を形成する時期
・探索段階(16〜25歳)……家庭や学校、仕事で成長する時期。仕事を模索する期間でもある
・確立段階(26〜45歳)……キャリアビジョンが明確になり、仕事における専門性を高める時期
・維持段階(46〜65歳)……得た経験や地位を守る時期
・下降段階(65歳以上)……肉体的な衰えから、仕事やその他の役割を引退する時期。セカンドライフを謳歌する

ライフロールは以下の8種類があります。

・子ども……家庭のなかで保護される立場
・学生……小学生〜大学生の段階
・労働者(職業人)……アルバイトや会社員、自営業などの仕事をする立場
・配偶者……夫や妻などの役割。内縁関係も含む
・家庭人……家事全般・日曜大工などの、親元を離れたところから始まる立場
・親……子どもに対して生活の保障・教育をおこなう、子どもを持ったときから始まる立場
・余暇人……スポーツや趣味など好きなことを楽しむ時間
・市民……ボランティアや地域の仕事など、地域の住民としての役割

以上挙げたライフロールは人によって経験数が異なり、すべてを経験する人もいれば一部のみになる人もいるでしょう。

スーパーは「キャリアは人生のあらゆるライフロールとの組み合わせである」といいます。仕事上の能力やスキルのみでキャリアが形成されるわけでなく、他のライフロールと相互に影響しあっているのです。

このようにライフキャリアレインボーを意識して可視化すると、現時点でのバランスの取り方を検討できるだけでなく、無理のないキャリア形成がかないます。

参考:文部科学省「高等学校キャリア教育の手引き」(https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2011/11/04/1312817_05.pdf

ライフキャリアレインボーの作成方法を4ステップで解説

ライフキャリアレインボーは以下のステップにて作成します。

1.現状を把握する
2.振り返りをおこなう
3.未来のライフキャリアレインボーを描く
4.将来の役割の変化に備える

順に説明します。

1.現状を把握する

まずは現在のライフキャリアレインボーを把握します。

現在のステージにおいて、役割ごとの重みをパーセンテージで書き、それをもとに以下のことを検討しましょう。

・現在になっている役割の比重や時間配分はバランスがとれているか
・満足している仕事や活動はどのようなものか
・現在の活動で何か改善したいことはあるか
・これらを洗い出すと、自分がいずれのライフロールに重きを置くのかを視覚的に把握できます。

2.振り返りをおこなう

次に自分自身がこれまでにした経験と、どのような感情になったのかを振り返ります。

幼少期から学生時代の自分を10年ごとに区切り、同じく役割をパーセンテージで書きましょう。

次に以下のようなことを振り返ります。

・自分が過去におこなったことで達成感を得たのはどのようなことか
・それらから何を学んだか
・自身がおこなった活動で後悔していることはあるか

振り返ると、これから大切にしたいことや、何に重きを置いて何を削るかといったビジョンを検討できるでしょう。自分の価値観を洗い出しそれに気付けると、これからどのように生きるかの方向性が定まります。

3.未来のライフキャリアレインボーを描く

次に今後想定されるライフステージやライフロールを洗い出します。

ステージごとに各役割の重みをパーセンテージで表し、以下の項目に対して、理想とする自分の姿を具体的に表すことが大切です。

・自分が何になりたいか
・何を成し遂げたいか
・何を手に入れるのか
・どのような生活を送るのか
・準備したいことはあるか

例えば「〇年までに副業を本業にする」「〇年までに課長になる」といったように、ビジョンを明確にします。

今後考え方は変化するかもしれませんが、現在の自分が思う正直な気持ちを書き出しましょう。

4.将来の役割の変化に備える

検討したライフキャリアレインボーをもとに、かなえるにはどのくらいの期間や労力がかかるのかを計算し、目標を達成するための行動を考えます。

もし現在自分のやりたいことが達成できていない場合は、以下を検討しましょう。

・現在の自分の環境を変えることで達成できるのか
・他のライフロールで達成するのか

これらを検討すると、今すぐおこなうべき行動があるのか、また、何年後かに達成するにはどのように物事を進めればよいのかを検討できます。

人はそれぞれ価値観が異なるものです。ライフキャリアレインボーを描き、人生において仕事をどのくらいの配分でおこなうのかをあらためて考えると、理想の人生に向けて具体的な行動に移せます。

企業が従業員のライフキャリアを支援する方法

企業が従業員のライフキャリアを支援すると、従業員のモチベーションやエンゲージメントが高まります。そのため、企業はライフキャリアレインボーを従業員に作成させ、自分のライフキャリアの可視化を促しましょう。

洗い出したライフキャリアをもとに面談を行い、現状思っていることや理想の未来を共有します。また、作成したライフキャリアレインボーをもとに、今後の目標や学ぶべき内容を設定することも大切です。

定期的に振り返ったり、書籍の購入代金を補助したり通信教育を受けさせたりと必要な支援を行いましょう。また、従業員に対し、柔軟な人事制度や福利厚生などの提供をおこなうことも大切です。

そのようにすると、従業員が自社でライフキャリアを形成したいと思う気持ちを高められるでしょう。

ライフキャリアを用いて従業員のエンゲージメントを高めよう

日本の労働人口が減少傾向にある現代では、あらゆる価値観を持った人が同じ組織に所属するようになりました。その中で、従業員ごとに仕事に対する比重の考えや、今後の展望は異なるものです。

そこで、企業がしっかりと個人の価値観を把握して支援するとエンゲージメントが高まり、知識やスキル、経験がたまります。人材育成と同時に、個人の価値観を把握して適切にアプローチし、目標達成をかなえる企業にしましょう。

【この記事を書いた人】
識学総研 編集部/株式会社識学編集部です。『「マネジメント」を身近に。』をコンセプトに、マネジメント業務の助けになる記事を制作中。3,000社以上に導入された識学メソッドも公開中です。

引用:識学総研 https://souken.shikigaku.jp/
コンサルタント紹介はこちらから https://corp.shikigaku.jp/introduction/consultant

 

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