「ニッポンのお父さんは盆栽好き」というよくあるイメージは、いったいどこから来たのでしょう? そんな素朴な疑問の端を発し、明治時代以来の日本の盆栽事情に迫るユニークな展覧会が、さいたま市大宮盆栽美術館で開催されています。(~11月30日まで)
現代の盆栽は、欧米ではBONSAIという語を生み、年齢や性別を問わず愛好家の幅は広がっていますが、ひと昔前は壮年男性のものというイメージがありました。
本展では、江戸文化を引き継いで展開していった盆栽が、明治の貴族の邸宅を飾り、文人墨客の高尚な趣味として愛され、世界の万国博覧会に出品されて日本趣味を煽った様などを、絵や写真、文献などで紹介し、昭和に向けて価値観を高めていった過程も併せて検証します。
本展の見どころを、さいたま市大宮盆栽美術館学芸員の田口文哉さんにうかがいました。
「日本で一番の盆栽愛好家と言えば、マンガ「サザエさん」の父親、磯野波平さんをおいて他にはないでしょう。明治生まれ(明治28年生まれとの説あり)の波平さんに代表される昭和のお父さんたちは、なぜ盆栽を趣味にしたのでしょうか。
この展覧会はこうした疑問から出発し、お父さんたちが生きてきた明治時代に遡ります。そこには、政財界人や文化人、そして女性や子どもと共にあり、ヨーロッパの人々をも魅了する、多彩で豊かな盆栽事情がありました。本展でご紹介する明治の盆栽事情をお楽しみください」
盆に広がる小宇宙、世界に誇る日本文化、盆栽の近代史を知る展覧会にぜひ足をお運びください。
【秋季特別展 明治の盆栽事情―昭和のお父さんの背景】
■会期/2016年10月8日(土)~11月30日(水)
■会場/さいたま市大宮盆栽美術館 企画室
■住所/埼玉県さいたま市北区土呂町2-24-3
■電話番号/048・780・2091
■料金/一般300(200)円 大高生・65歳以上150(100)円 中小生100(50)円 ( )内は20名以上の団体料金
■開館時間/10月まで:9時から16時30分まで、11月より16時まで(入館は閉館30分前まで)
■休館日/木曜日(ただし祝日の場合は開館)、11月4日(金)は展示替えのため本展示室のみ閉室
■アクセス/JR宇都宮線土呂駅東口より徒歩約5分、東武アーバンパークライン大宮公園駅より徒歩約10分
取材・文/池田充枝
1989年「サライ」