多くのガラス製造家が実現できなかった“琥珀色”のクリスタルが、最近になり、北海道の生地グラス製造元によって、製品化できるようになった。この報を耳にした工芸プロデューサーの川商が、これまでにない色のクリスタルに見合う装飾を施そうと考えた。
こうして白羽の矢を立てられたのが、創業95年を誇る江戸切子の堀口硝子と、ガラス作家の花岡和夫さんだった。
江戸切子は、東京に伝わるカットガラスの技術だが、もともとヨーロッパのガラス装飾の技術である。江戸切子は直線の切り込みで小紋のように模様を付ける技法。
ここに採用されている「菊つなぎ」という紋様の細かさを見れば、どれだけ手が込んでいるかがわかるだろう。
一方、絵画のようにリアルな図柄を刻むのが「グラヴィール」技法である。花岡さんはスペインで学んだ作家で、春をイメージして緑を着せた器には雀、夏に思いを馳せて瑠璃色を着せた器にはトンボを、この技法を用いて、ひとつの器に3つずつ削り出した。
日本で発展した江戸切子とヨーロッパのグラヴィールの共演により、宝石のような価値あるグラスが生まれた。
商品名/江戸切子のぐい呑み
メーカー名/川商
価 格(消費税8%込み)/64,800円