「焼酎・農業・美味豚」と並べると、何やら落語の三題噺めくが、これは鹿児島の西酒造が取り組んでいる循環型農業のテーマである。西酒造といえば「薩摩宝山」「富乃宝山」で知られる焼酎の蔵元だが、育苗ハウスや精米施設も持っており、深く農業と関わっている。そして良質な豚の育成も提案する。
蔵元が考える循環型農業とは、焼酎の原料である芋栽培の土作りから始まる。良き芋を栽培するためには良き土が必要。そのため黒豚を飼育し、その糞や尿から良き堆肥を作り、土に混ぜ込む。豚を飼育する際には、焼酎造りの過程で発生する焼酎粕を与える。焼酎粕を食べた豚はほろ酔いとなり、ストレスを溜めることなくおいしい肉を身につけるという。
「焼酎粕にはアミノ酸を含む発酵エキスと微量のアルコール成分が残っています。酸味による食欲増進、また液餌が豚の習性に合います」(西酒造・有馬健晃工場長) そして、その黒豚の糞尿を土に還元して、循環型農業が完成する。
循環型農業の概念図。焼酎粕は産業廃棄物扱いされるが、これを上手に飼料、肥料として使用することで、旨き焼酎、旨き豚肉を生み出す。契約農家との二人三脚の取り組みだ。