【ひと皿の歳時記~第116回】
銀座『すきやばし次郎』の「たこのにぎり」
フランス料理のグランシェフ、ジョエル・ロブションさんを「すきやばし次郎」へはじめてお連れしたのが1986年ですから、ちょうど30年前のことになります。
小野二郎さんの握るすしにいっぺんで魅了され、いつしか「飛行機に乗ってでも食べに出掛けたい唯一の店」とまで言うようになりました。
今から15年ほど前、はじめて冬の「次郎」へご案内しました。
二郎さんが、たこを切り付けはじめると、ロブションさんは私にこうささやきました。
「じつは、たこは大嫌いなんだ。スペインで新鮮なたこを食べても、ゴムみたいに堅いだけで、味が全くない。ただ、尊敬するジローさんが握るのだから…」と言って、たこの上に粗塩でお化粧が済んだにぎりを、三噛み、四噛みするうちに、目がみるみる丸くなって「おお、ラング―スト(伊勢海老)の味がする!」と感嘆の声を挙げたのです。
そのことを、二郎さんに伝えると「たこは海老を餌にしているからね。でも、日本人はたこを食べても、たこの味としか言わない。ロブション、さすがだね!」と答えたのでした。
年が明けて、その「たこ」が品書きに加わるようになりました。2月いっぱいまでの出番で、とても旬が短いすし種です。
店舗情報
店名 | すきやばし次郎 |
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住所 | 東京都中央区銀座4-2-15 塚本総業ビルB1階 |
TEL | 03-3535-3600 |
営業時間 | 昼)11時30分~14時 (夜)17時30分~20時30分 |
定休日 | 日曜、祝日、土曜夜、8月中旬、年末年始 |
URL | http://www.sushi-jiro.jp/ |