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一度途絶えた伝統製法が復活。すりつぶした大豆を加えて打つ、甘み豊かな津軽蕎麦【片山虎之介の「蕎麦屋の歩き方」第29回】

 雨音が聞こえなくなったので窓の外を見ると、大粒の雪が音もなく降っている。こんな日は、雪を見ながら弘前の『野の庵』で食べた津軽蕎麦の味を思い出す。津軽地方では、蕎麦は温かい汁をかけて味わう「かけそば」が伝統の食べ方だ。

『野の庵』の創業は明治初期だが、その頃は茹でた蕎麦を箱に入れ、天秤棒でかついて売り歩く「振り売り」を行なっていたという。

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津軽蕎麦の特徴は、大豆をすり鉢ですりつぶした「呉汁」(ごじる)を使って蕎麦を作ることにある。

鍋の中に、呉汁と水と蕎麦粉を入れ、加熱しながらかき混ぜると大きな蕎麦がきのような塊になる。それを水につけて冷やし、蕎麦粉に混ぜて打つ。打ち上がった蕎麦は、ひと晩寝かせてから食べる。

こうすると、なぜだかわからないのだが、蕎麦の甘みが増して、保存性もよくなるのだという。古くから伝わる、津軽蕎麦の製法である。

『野の庵』では、一度途絶えた津軽蕎麦の製法を、平成13年に復活させ、現在も、この方法で作った津軽蕎麦を供している。

 『野の庵』の魅力は蕎麦以外にもあり、コースとして供される日本料理の評判も高い。予約して訪れると、心づくしの料理と津軽蕎麦を満喫できるだろう。物腰の軟らかな女将の話を聞くのも楽しい。

そして、何よりも『野の庵』の楽しさは、窓から見える風景にある。

春には弘前城を包むように咲く桜景色を楽しむことができるし、雪の日には、太宰治が津軽には七つの雪が降ると書いた冬景色を堪能できる。

久しぶりに、雪を見に『野の庵』に出かけてみようか。

■野の庵
住所/青森県弘前市五十石町57
TEL/0172-36-0500

文・写真/片山虎之介

世界初の蕎麦専門のWebマガジン『蕎麦Web(http://sobaweb.com)』、及び『そばログ(http://soba-log.com)』編集長。蕎麦好きのカメラマンであり、ライター。サライで撮影と文を担当して記事を制作。16年になる。著書に『真打ち登場! 霧下蕎麦』『正統の蕎麦屋』『不老長寿の ダッタン蕎麦』(小学館)、『ダッタン蕎麦百科』(柴田書店)などがある。

 

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