取材・文/渡辺陽(わたなべ・よう)
フィットネスクラブに入会したけれど、なんとなくやめてしまった。忙しくて続かない、相変わらずメタボのまま、会費は支払っているが、ほぼ利用していないという人も多いのではないでしょうか。運動しなければいけないと頭では分かっていても、継続するのは難しいものです。運動を続けるための秘訣を、トレーナー歴約30年のエグゼクティブトレーナー・小川出(おがわいずる)さんにうかがいいました。
フィットネスクラブに入会しても続かない人
――なぜフィットネスクラブに入会してもやめてしまうのでしょうか。
小川出さん(以下、小川):フィットネスクラブに入会する時は、運動不足を解消したいとかメタボだと医者に言われてダイエットしたいとか、みなさん何らかのきっかけがあって入会します。
運動をしないと1年に1㎏くらいずつ体重が増える人が多いのですが、20歳で60㎏だったら40歳で80㎏になってしまいます。40代、50代になると「運動をしなければいけない、ダイエットが必要」と思うのです。
しかし、医者に言われて仕方ないからやるという人や、ただ単にやせたいと思う人は、運動を長期間続けられない傾向にあります。マシンジムでトレーニングしたり、プールで歩いたり、2カ月くらい続けて、80㎏から77㎏になると、「数字をクリアできたからもういいかな」と思ってしまう。しかし、そこでやめてはまた元の身体に戻ってしまいます。
やせて何をしたいのか、目標はありますか?
――単に「やせたい」というだけでは続かないのですね
小川:「単にやせることだけを目標にするのではなく、『やせて何をしたいのか』目標を持つことが大事です。もう一度テニスやマラソンなどのスポーツがしたいとか子どもと一緒に何かをしたいとか、おしゃれをしたいとか、モチベーションを上げましょう。
そうでないと、毎日ジムに来ていても「これをやって何の意味があるんだろう」と思ってしまいます。スポーツは自己啓発をすると必ず伸びるので、1点でも多く取りたいとかもっと速く走れるようになりたいとか、何か目標があると、どんどん楽しくなるのです。
――しかし、「やせる」というのも目標なのではないでしょうか。
小川:「やせたい」は表向きの目標であることが多いんです。やせて本当は何をしたいのか。最初は何も目標を持っていない人もいますし、何かしたいと思っていてもおこがましいから言えないという人もいます。しかし、義務のように身体を動かしても続けられません。やせたその先に何かやりたいことがあると、運動を「スポーツ」として楽しめるようになるのです。
――たとえばどんな人のトレーニングをなさいましたか。
小川:晩婚で、高齢出産をした人が幼稚園の参観に行った時、子どもから「お母さんだけ太っていた」とそっぽを向かれたそうです。最初は子どものためにやせようと思ったのですが、その人は、私の養成講座を受講してエアロビクスのインストラクターになり、いまは60代ですが、ヨガのインストラクターをしています。
ある女性は、30代の頃、運動習慣もなく、たびたび体調不良になるなど、体力がないことが悩みでした。40代後半になってから歩き方を教わりに来たのですが、最終的には毎日走らないと気が済まなくなったんです。毎日7km~8㎞走って、マラソンに出るためのトレーニングをしたのですが、2年かけて10㎞のマラソン大会に出られるようになりました。体力がついただけではなく、声が大きくなり、表情も生き生きしてきました。
何歳になっても遅くはありません。やせるためだけにダイエットをするのではなく、夢や目標を持って運動してみましょう。
小川出 ㈱オージースポーツ 営業戦略部プログラム開発担当部長兼 フィットネス担当部長 エグゼクティブトレーナー 健康運動指導士 加圧インストラクター
日本体育大学卒業以来、数々のフィットネスクラブにて指導に携わる。ラグビー・柔道・陸上・水泳・スキーと様々なスポーツ経験を活かし、アスリートのフィジカルトレーニング指導、各地でインストラクターや健康指導、およびセミナー活動を行う。
取材・文/渡辺陽(わたなべ・よう)
大阪芸術大学文芸学科卒業。「難しいことを分かりやすく」伝える医療ライター。医学ジャーナリスト協会会員。小学館サライ.jp、文春オンライン、朝日新聞社telling、Sippo、神戸新聞デイリースポーツなどで執筆。