取材・文/渡辺陽(わたなべ・よう)

フィットネスクラブのエグゼクティブトレーナーが教える、運動を続ける秘訣|質的効果を感じる
メタボだけでなく、加齢によって運動能力が衰えていくのをひしひしと感じていませんか。しかし、サライ世代は仕事も多忙。たまの休日はショッピングやグルメも満喫したいので、運動なんかしている暇はない、分かっているけど腰が重い。しかし、それでは身体は衰える一方です。運動を続ける秘訣を、トレーナー歴約30年のベテラントレーナー・小川出(おがわいずる)さんに伺いました。

健康の三要素、「栄養・休養・運動」

――人生100年時代、健康でいるためには何が必要でしょうか。

小川出(おがわいずる)さん(以下、小川):健康の三要素は、「栄養・休養・運動」だと言われています。

私は51歳なんですが、同窓会に行くと太っている人が多いんです。「体型、変わらないな、いつまで運動するの?」と言われるのですが、「いつまでも」と答えます。逆に、「なんで運動をやめるの?」と尋ねると、「栄養や休養は生きていくのに必要だけど、運動はしなくても死なない」と言うんです。

しかし、運動をしないと衰えていく細胞がたくさんあります。ジャンプができない、全速力で走れない、股関節が癒着して大股で歩けない、猫背になるなど老化が進行します。人間の機能がどんどん衰えていき、病気になるリスクも高まるんです。運動をしなければ、どんどん衰えていく。みんな分かっているはずなんですけど運動しない。「もう齢だし、まあいいや」とごまかしてしまいます。

まずはルーティン化する

――40代、50代の場合、仕事が忙しくて運動をやめてしまう人もいるのではないでしょうか。

小川:人間は、一週間の生活パターンが決まっている人が多いでしょう。木曜日の夜は時間に余裕があるとか、月曜日は忙しいとか。金曜日の夜はフィットネスクラブに行くと決めてしまうと木曜日から準備しようかなという気持ちになって、準備ができます。ルーティン化すると続けやすくなるんです。

じつは、ラジオ体操には非常に強度の高い動きも入っているのですが、厚生労働省がラジオ体操を推奨するのは、ルーティン化と継続がいかに大事なのかを知っているので、あえてラジオ体操を変えないんです。

――ルーティン化と忙しさ、バランスを取るのが難しそうですね。

小川:葛藤があって、やめてしまう人もいます。天秤にかけた時に忙しさが勝ってしまうんです。でも、フィットネスクラブに入会した時だってみんな忙しいんです。

――「忙しい」と自分に言い訳しない方法はありますか。

小川:最初から無理な運動をする必要はないので、まずは、できることから始めて継続しましょう。1カ月間同じことをしてください。成長が感じられた時に少し強度を上げます。だんだんはまってくると、勝ちたいとか強くなりたいとか思って、意識しなくても頑張れるようになってきます。ただの「運動」としてやっていると、面白くなくて続かないのですが、「スポーツ」として楽しめるようになると継続できるんです。

数的効果だけにとらわれない、質的効果にも注目!

――脱メタボのためにダイエットするなら、体重が落ちるのも楽しみのひとつになりますね。

小川:体重や体脂肪、健康診断の結果などの「数的効果」は、思うように数値が下がらないと効果が出ていない、運動しても意味がないと感じてしまうんです。もちろん、数的効果も大事ですが、それ以上に「質的効果」に注目してもらいたい。たとえば、寝起きが良くなったとか、食事が美味しく感じられるということが質的効果です。生活の質が上がると、運動を継続しやすくなります。数的効果は分かりやすいのですが、質的効果にも注目してください。

――数的効果と質的効果、両方上げたいと欲張りたくなりますね。

小川:人それぞれの健康法がありますが、深呼吸したり大きく背伸びをしたりしてもいいでしょう。一番いけないのは、何もしないことです。日常生活におけるひと駅分歩くとか階段の昇り降りをするとかいう生活活動もとてもいい試みです。ただそれだけでは運動量が少ないので、日常生活以外にも何か目標を持って、できることからスタートしましょう。やせて何がしたいのか目標を持つことも重要です。続けていると次第に、うまくなりたい、勝ちたいなど、自己啓発の意識が芽生えてくるので、少しずつ強度を上げながら運動を継続してください。

小川 出小川出 ㈱オージースポーツ 営業戦略部プログラム開発担当部長兼 フィットネス担当部長 エグゼクティブトレーナー 健康運動指導士 加圧インストラクター
日本体育大学卒業以来、数々のフィットネスクラブにて指導に携わる。ラグビー・柔道・陸上・水泳・スキーと様々なスポーツ経験を活かし、アスリートのフィジカルトレーニング指導、各地でインストラクターや健康指導、およびセミナー活動を行う。

取材・文/渡辺陽(わたなべ・よう)
大阪芸術大学文芸学科卒業。「難しいことを分かりやすく」伝える医療ライター。医学ジャーナリスト協会会員。小学館サライ.jp、文春オンライン、朝日新聞社telling、Sippo、神戸新聞デイリースポーツなどで執筆。

 

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