取材・文/柿川鮎子
新型コロナウイルスに関して飼い主さんが知っておきたい3つのポイント
楽しみにしていたさまざまなイベントが休止や延期になり、職場でも新型コロナウイルス対策で出張や会議、入社式の取りやめなど、さまざまな影響が出ています。心配なのは、新型コロナウイルスの発生が野生動物からの感染ではないかと考えられている点で、ペットを飼育している私達も、他人事ではありません。

ペットの飼い主が知っておきたい新型コロナウイルスに関する3つのポイントを、ひびき動物病院院長の岡田響先生にうかがいました。そもそも、犬や猫からうつることはあるのでしょうか?

■ポイントその1:ペットから人へはうつらない

岡田先生「現時点での厚生労働省やWHOの情報から考えると、新型コロナウイルスは、ペットからは感染しません。国立感染症研究所の情報によれば、コロナウイルスの種特異性は高く、種の壁を越えて他の動物に感染することは殆どない、とされています。

ペットとヒトの間で関係する他の感染症や、細菌感染を防ぐ点からも、『普段から動物に接触した後は、手洗いなどを行うようにしてください』と呼びかけています」と教えてくれました。

世界小動物獣医師会(WSAVA:World Small Animal Veterinary Association)では、新型コロナウイルスと伴侶動物についてのガイドラインを出しています。それによると“現時点では飼い犬や飼い猫、産業動物から新型コロナウイルスに感染する可能性や伴侶動物がひとや他の動物に感染を媒介することは非常に考えづらく、エビデンスがない。しかし、事態は急速に進展しており、最新情報に注意が必要”と書かれていました。

■ポイントその2:ペットのコロナウイルスとは別もの

わが家の犬は8種混合ワクチンの予防接種をしていますが、病院からもらった予防する病気の一覧は「犬ジステンパー、犬アデノウイルス2型感染症、犬伝染性肝炎、犬パラインフルエンザウイルス感染症、犬パルボウイルス感染症、犬コロナウイルス感染症、犬レプトスピラ病(2種)」でした。犬もコロナウイルスに感染するのですね?

岡田先生「この犬のコロナウイルスはイコール新型コロナウイルスでありません。前述の通りコロナウイルスの種特異性は高く、種の壁を越えて他の動物に感染することはほとんどない、とされています。

犬のコロナウイルス感染症は犬パルボウイルス感染症などに併発してみられることがあり、腸炎などの症状が一般的です。ヒトのかぜ様症状のような呼吸器症状のコロナウイルスに関する詳細は未だ不明です。

一方で猫のコロナウイルスではFIP(猫伝染性腹膜炎)という難病になるケースもあります。腹膜という、胃などの臓器の表面と臓器がおさまっている腹腔を包んでいる膜に、炎症が起こる病気です。同じ病気は犬にはありません」と教えてくれました。

子猫にとっては命の危険もあるFIP

子猫にとっては命の危険もあるFIP

■ポイント3:不安な時は獣医さんに相談してみて

最後に岡田先生から、「例外はたくさんありますが、基本的にコロナウイルスは種を超えて感染することは少ないので、まずは普段の予防注射など、飼い主さんができる範囲で、ペットもしっかり守ってほしい」とアドバイスしています。

前述したWSAVAでは、 飼い主さんに勧めらることとして以下の点を紹介しています。

・十分に衛生状態を保てる限りは飼っている伴侶動物と一緒にいる
・猫は屋内にとどめておく
・もし家族や友人で入院しているものがいる場合は動物を預けに出す
・不安がある場合は速やかに獣医師に相談する

ほかに、不安から動物の遺棄や処分はしないでほしいということが記載されていました。

WHOでは、コロナウイルスの予防と、他の細菌病などの予防の観点からも、ペットを触った後の手洗いをしっかりやろう、というポスターを作成しています。石けんと流水による手洗いやうがいは引き続き、有効な予防対策のひとつです。石けんと流水による手洗い

■獣医師会のサイトも参考に

東京都獣医師会では、飼い主さんに向けて「新型コロナウイルスQ&A」というサイトを開設しています。ペットを飼育している人がコロナウイルスに感染した場合の対応策について、

・あなたが病院等、隔離された場所に行かなければならない場合には、安心してペットのお世話を頼める人に預けましょう。
・あなたとペットが室内で一緒に生活していたのであれば、患者であるあなたが暮らしていた部屋にペットを残し、お世話に通ってもらう方法は、感染対策上お勧めできません。
・ペットを預ける場合、念のために、被毛を洗浄するか、またはペットと接する際にはマスクやグローブをつけてもらい、お世話をした後は、丁寧な手洗いを励行するようにお伝えください

とアドバイスしています。また、飼い主のみなさまへ【香港でのPCR検査で、低いレベルの新型コロナウイルスが犬から検出された報道について】というお知らせも掲載されているのでご参照ください。

ペットを飼育している人が感染し、接触したペットの毛の汚れが気になった時、アルコール消毒が有効です。しかし、毛の多いペットを完全に消毒するのは難しく、特に現在のように、消毒液が不足している中では、大量に購入するのは不可能でしょう。そうした場合は、ペットを洗うのも有効な手段のひとつとして、考えられています。

非常事態ではありますが、学校の休校などで子どもたちも室内で過ごす時間が増え、ペットとたっぷり遊べるようになるかもしれません。思いがけずに得た貴重な時間を大切にしながら、流行の早い終結を願っています。

岡田響さん(ひびき動物病院院長)取材協力/岡田響さん(ひびき動物病院院長)
神奈川県横浜市磯子区洋光台6丁目2−17 南洋光ビル1F
電話:045-832-0390
http://www.hibiki-ah.com/

 

文/柿川鮎子
明治大学政経学部卒、新聞社を経てフリー。東京都動物愛護推進委員、東京都動物園ボランティア、愛玩動物飼養管理士1級。著書に『動物病院119番』(文春新書)、『犬の名医さん100人』(小学館ムック)、『極楽お不妊物語』(河出書房新社)ほか。

 

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