取材・文/坂口鈴香

活用しないともったいない! 自治体独自のサービスや「ふるさと納税」で離れて暮らす親を見守ろう

kazu1145さんによる写真ACからの写真

高齢の親と離れて暮らす家族にとって、親に変わったことがないかは最大の関心事ではないだろうか。親が訪問介護やデイサービスなどの介護サービスを受けていれば、ある程度不安は解消されるだろう。ところが親が一人暮らしで介護サービスを受けていないと、倒れたり、体調が悪くて寝込んだりしていても誰にも気づかれないことになる。電話をかけていても、それだけでは不安だという家族も多い。かといって民間の安否確認サービスは利用料が高く、利用を躊躇している家族もいるだろう。

そんな不安を軽減してくれるサービスに、自治体も独自に取り組んでいる。介護認定の有無にかかわらず利用できるサービスもあるが、その多くは申請しないと受けられないサービスだ。せっかくサービスがあっても、知らないことで利用できないのはあまりにもったいない。

そこで、今回は、頻繁に親の様子を見に行けない家族にかわって親を見守ってくれる、代表的な安否確認サービスを紹介しよう。

■自治体独自のサービス

独自に安否確認サービスを提供している自治体は多い。その代表的なものが、「配食サービス」「乳酸菌飲料配達サービス」や「緊急通報装置の貸与」だ。

「配食サービス」は弁当などを宅配、「乳酸菌飲料配達サービス」は乳酸菌飲料を宅配する際に、受け取る高齢者の安否確認も行うというサービスだ。配達するのは、民間企業や地域のボランティア、NPO法人などで、細かい条件は自治体によって変わってくるので確認が必要だ。

また、安否確認が中心の見守りサービスと混同されがちだが、急に具合が悪くなったときやケガをしたときなどに、緊急ボタンを押すだけで自動的に受信センターに通報され、対応してくれるのが「緊急通報システム」だ。通報のための機器である固定電話型の装置とペンダントなどを貸し出したり、利用料金を助成したりしている自治体もある。通報されると、事前に登録した家族や民生委員などが、通報した高齢者宅に状況確認に行くことになっている。

そのほか高齢者が日常生活で直面する困りごとについては、「軽度生活援助」(一人暮らしの高齢者などが、軽度な日常生活の援助を依頼できる)や、「家庭ごみ訪問収集」事業(ゴミ出しが困難な世帯に、戸別に訪問して家庭ごみを収集する)などといったサービスもある。「家庭ごみ訪問収集」で安否確認を兼ねる自治体もある。サービスを提供するのは、シルバー人材センターや住民ボランティアなど、自治体によってさまざまだ。

見守りにICTを活用する自治体もある。愛媛県西条市ではコミュニケーションロボットを活用し、離れて暮らしている家族と音声メッセージや写真等をやり取りしてコミュニケーションをはかるサービスを実施している。今年5月からはお試し無料サービスをはじめているので気軽に試すことができる。ただし、無料でのお試し期間は決まっている(無料での利用期間は約3週間)。とはいえ、親が西条市に住んでいるのなら使わない手はないだろう。

これらの自治体のサービスはいずれも条件があったり、申請が必要だったりする。条件に当てはまっていても、自ら申請しないとサービスが受けられないことがほとんどだ。親の住む自治体にどんなサービスがあるのかを調べて、できれば家族が申請することをおすすめする。

■地域全体を見守る活動も

また、民間の事業者やNPOが自治体と連携して、地域の見守り活動を行っている例もある。提携する事業者が配達などの日常業務を行うなかで、「電気が使われていない」「新聞がたまっている」などの異常を自治体に連絡する取り組みだ。

首都圏の各都県や福島、静岡の各自治体と見守り協定などを結んで、地域の見守り活動を行っている生協のパルシステムは、利用者家族に対する見守りサービスも行っている。毎週の配達時に見守り対象者のお届け情報を家族にメールで知らせるサービスや、対象者が倒れているような緊急時や過去届けた商品が放置されているなどの異常を察知すると通報するサービスを、登録料、利用料いずれも無料で行っている。

■ふるさと納税で使える見守りサービス

自治体独自のサービスのほかにも、ふるさと納税の返礼品として安否確認サービスを導入している自治体もある。自治体独自のサービスと同じように「弁当を宅配して安否確認をする」「乳酸菌飲料を届けて安否確認をする」「牛乳などの乳製品を宅配して安否確認をする」「野菜の宅配サービス」「ゴミ出し代行サービス」「緊急通報システム設置サービス」「シルバー人材センターによる家事援助サービス」など多様なサービスがある。また、見守りサービスではないが「お墓の清掃、花替えサービス」といった家族の細かなニーズに対応するサービスまで登場している。

郵便局の「みまもりサービス」をふるさと納税の返礼品として導入している自治体もある。これは、郵便局社員等が月1回親の家を訪問し、会話を通じて生活状況の確認をしたり、毎日自動音声による電話で体調確認をしたりして、家族に生活状況を報告するというものだ。

ふるさと納税で使えるこれらのサービスは、回数や頻度は納税金額によって変わってくる。自治体独自のサービスや自費で契約するサービスと組み合わせるのもいいだろう。

* * *

今回は、自治体独自の見守りサービスやふるさと納税を活用して受けられる見守りサービスについて解説した。

ぜひ、親の住む自治体にこうしたサービスがないか、調べてほしい。帰省したときに、地域包括支援センターに行って聞いてみたり、自治体のホームページで情報を集めることをおすすめしたい。

取材・文/坂口鈴香
終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終活ライター”。訪問した施設は100か所以上。20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。

 

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