写真・文/矢崎海里
皆さん、「煎り酒」という調味料をご存じですか。
古くは日本の調味料として活用されていた煎り酒ですが、現在ではあまり使われていません。
しかし、万能調味料として近年では少しずつ注目を集めています。
市販品も販売されている煎り酒ですが、家庭でも簡単に作ることができます。
今回は煎り酒の作り方と、煎り酒を使ったレシピを2つご紹介します。
煎り酒とは?
煎り酒は室町時代末期に考案されたといわれています。
日本酒に、梅干しとかつお節を入れて煮詰めたものです。
しっかり煮詰めることで、だしの風味が移り、梅干しの塩気だけで味をつけています。
醤油と同じように使われていましたが、醤油より塩分が少なく、風味があり上品な仕上がりになります。
この後紹介するレシピで作った場合の煎り酒を、塩分濃度計で測定したところ、0.9%でした。
これをもとに、塩分比較をすると、
醤油 大さじ1 食塩相当量2.6g
煎り酒 大さじ1 食塩相当量0.2g
とその差は歴然。
ですが、しっかりと味を感じることができ、この調味料ひとつで味が決まります。
刺身、とくに淡泊な白身などに付けて食べると相性が良いほか、薄めて和麺のつゆなどに活用するのもおすすめです。
高級感ある味わいの煎り酒の作り方はシンプルです。
ここからは、家庭で作れる煎り酒の作り方をご紹介していきます。
煎り酒の作り方
【材料】(作りやすい分量)
日本酒 200cc
昆布 5cm1枚
梅干し 3個
※今回は減塩はちみつ梅で作りました
かつお節 ひとつかみ
【作り方】
1.昆布は乾いた布で表面を軽く拭き、日本酒に漬け一晩置く。
2.昆布を取り除き、日本酒を鍋にかける。梅干しは種を除きながらちぎって鍋に入れ、中火で加熱する。
3.煮立ったらかつお節を加え弱火にし、水分が半量になるまで煮詰める。
4.水分が半量になったら火を止める。あら熱が取れたら濾し、完成。
お酒は料理酒ではなく、純米酒を使用して作りましょう。
昆布とかつおの旨味の中に、梅干しの風味がほんのり移った、とても上品な調味料になります。
シンプルに食材と和えるだけで、家庭の調味料では出せないような奥行きのある味わいに。
清潔な容器に入れ保存することで、冷蔵庫で2週間ほど日持ちします。
ここからは、夏にぴったりの煎り酒を使ったレシピを2つご紹介します。
シンプルな調理法で、調味料も少なく調理できるので、ぜひお試し下さい。
夏野菜の煎り酒焼き浸し
【材料】(1人分)
かぼちゃ 30g
パプリカ 1/2個
ズッキーニ 1/4本
煎り酒 大さじ1
オリーブオイル 小さじ1
【作り方】
1.かぼちゃは食べやすい大きさに薄切りにする。
2.ズッキーニは5mm程度の輪切りにする。
3.パプリカは縦1/4の大きさに切る。
4.フライパンにオリーブオイルを熱し、かぼちゃ・ズッキーニ・パプリカを両面焼く。
5.熱いうちに煎り酒と和え、冷蔵庫で冷やしながら味をなじませたら完成。
いろいろな食べ方がある夏野菜。
「和」の調味料煎り酒と、オリーブオイルを組み合わせたレシピです。
温かいままでも食べられますが、冷やして味をなじませることで、暑い日にもぴったりのおかずになります。
茄子やトマトを具材にしたり、みょうがや大葉を添えても良いですね。
食塩相当量:0.2g
たこときゅうりの和風マリネ
【材料】(1人分)
茹でたこ 50g
きゅうり 1/2本
煎り酒 大さじ1
酢 小さじ1
【作り方】
1.たこ・きゅうりは一口サイズの乱切りにする。
2.1と煎り酒・酢をボウルで和え、5分ほど味をなじませたら完成。
煎り酒と酢で和えた和風マリネのレシピは、夏にぴったりのさっぱりしたおかずです。
ちょっとしたおつまみや、箸休めにもぴったりのメニューです。
食塩相当量:0.5g
* * *
これひとつで味が決まり、塩分も押さえることができる煎り酒。
ぜひ一度、ご家庭でもお試し下さい。
文/矢崎海里(やざき・かいり)
管理栄養士やフードスペシャリストなどの資格を生かし、企業で働く傍ら、Webメディアでも活動。おいしく食べて健康になれるごはんを研究中。