文/石川真禧照(自動車生活探険家)
小型で高性能な車づくりに定評のあるスズキ。同社の人気車種のひとつジムニーが20年ぶりに全面改良された。初代の登場からほぼ半世紀。進化を遂げた4代目となる新型の実力と魅力を探る。
スズキのジムニーは1970年に排気量360ccの軽自動車として発売された。当時は国産唯一ともいえる小型の本格4輪駆動車だった。軽自動車は日本独自の規格である。排気量の小さなジムニーを輸出しても海外市場ではエンジンの力不足を指摘され、販売台数を見込めない。そこで、1977年から海外市場向けに排気量800ccのエンジンを積んだ車種がつくられ、国内でもジムニー8という名称で販売された。
その後も輸出用に、排気量のより大きなエンジンを搭載し、車体もワイド化したモデルが登場。それらは軽自動車のジムニーと差別化するため、ジムニーワイド、ジムニーシエラと名付けられた。
1993年以降、ジムニーは排気量660ccの軽自動車と、1300ccのジムニーシエラの2車種が用意され、2018年7月、両車は20年ぶりに全面改良された。新型は悪路走破性に磨きがかかり、安全装備の充実が図られている。
排気量が1.5Lに拡大
今回は高速での走行性にも優れるジムニーシエラを紹介したい。
ジムニーシエラの外装は軽自動車のジムニーと基本的に同じだ。しいて違いを挙げると、トレッド(左右のタイヤの中心間距離)が13cm広く、フェンダーにタイヤを覆うカバーが付けられていること。そして、前後のバンパーがより大型であることの2点である。
エンジンは排気量1.5Lに拡大されたガソリンエンジン。それに5段手動変速もしくは4速自動変速機が組み合わされている。さらに2輪駆動と4輪駆動の切り替えを運転席横のレバーで行なえる副変速機も備えている。
高速走行の安定性に優れるので、長距離運転を楽しむ人にもお薦め
欧州への輸出台数の多いジムニーシエラは、開発段階でドイツのアウトバーンで走行テストを実施したという。アウトバーンとは速度無制限区間のある高速道路で、小型車でも時速100~130kmで走行するのが通常だ。ここで時速130km巡航のテストを繰り返した結果、ジムニーシエラは悪路のみならず、高速走行でもしなやかで安定した走りを手に入れた。軽自動車のジムニーよりも運転時の疲労が少ないので、高速道路を使って遠出する機会の多い人なら、ジムニーシエラがお薦めである。
安全面でも進化を遂げている。特に予防安全と衝突安全はスズキの乗用車と同じ水準で、単眼カメラと赤外線レーザーレーダーを組み合わせた衝突被害軽減ブレーキ、誤発進抑制、車線逸脱警報、ふらつき警報、先行車発進お知らせ機能など、充実の安全装備だ。
さらに、車両進入禁止や追い越し禁止などの標識、走行している道路の制限速度などをメーター内に表示し、運転者に注意を喚起する標識認識機能も採用されている。
軽自動車のジムニー同様、ジムニーシエラも評判が高く、発売から約1か月間で年間目標販売台数の半分が売れたという。
【スズキ/ジムニーシエラ JC】
全長× 全幅× 全高:3550×1645×1730mm
ホイールベース:2250mm
車両重量:1090kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ/1460cc/span>
最高出力:102PS/6000rpm
最大トルク:13.3kg-m/4000rpm:30.6kg-m
駆動方式:パートタイム4WD
燃料消費率:13.6㎞/L(WLTCモード)
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン 40L
ミッション:4速自動変速機
サスペンション:前・後:3リンク式
ブレーキ形式:前:ディスク 後:ドラム
乗車定員:4名
車両価格:187万円
問い合わせ:お客様相談センター 0120・402・253
文/石川真禧照(自動車生活探険家)
撮影/佐藤靖彦
※この記事は『サライ』本誌2019年2月号より転載しました。