文/石川真禧照(自動車生活探険家)
実用性に優れたSUV市場の活況が続く中、イギリスの高級車メーカー・ジャガーが、日本の道路事情にも合うスポーティな小型SUVを発売した。随所に“ジャガーらしさ”が光る同車の魅力を探る。
英国のジャガーは1945年の創業以来、スポーツ心あふれる車づくりを一貫して行なってきた。たとえファミリー向けの4ドアセダンであっても、サーキットに行って荷室に積み込んであるスペアタイヤを取り出せば、充分競争力のある車になった。そうした車づくりに対する姿勢は、今でも変わっていない。
しかし、昨今は国内外を問わずSUV(多目的スポーツ車)の人気が極めて高く、それを無視して車づくりを続けることは難しい。高性能なスポーツ志向の車を得意とするジャガーも例外ではなく、2年前、約70年の歴史の中で初のSUV「Fペイス」を発売した。
一般にSUVは、セダンなどの乗用車の足回りを基に最低地上高を上げ、屋根を高めにして室内に余裕を持たせているのが特徴だ。また、4輪駆動方式を採用することが多く、未舗装路や砂地などの走行性にも優れている。海や山に出かけても行動範囲が広がるので、用途の広い実用車として世界中で評判を呼ぶようになった。当然、販売台数も増加し、自動車メーカーはこぞって、この分野の新型車を市場に投入し始めたのである。
その後、ポルシェがSUVを手がけたことで高級車にもその動きが広がった。最近ではランボルギーニやアルファロメオなど、スポーツカーをつくり続けてきたメーカーに加え、ロールスロイス、ベントレーといった世界屈指の超高級車メーカーもSUV市場に参入し、話題となっている。
ジャガー初のSUV、Fペイスも販売台数が好調であることから、同社はさらに小型のSUVを開発し、市場に投入した。それが今回紹介する「Eペイス」である。
運転席の視界は良好。駆動力の配分を変え、燃費を向上させる。
ジャガーが手がけるSUVの魅力は、美しい車体とスポーツカーのような走りを味わえることだろう。Eペイスはクーペを思わせる流麗な車体造形がとりわけ美しく、洗練された意匠の室内には高級感が漂う。全長は約4.4mと短めだが、車幅は1.9mなので、見た目以上に室内空間に余裕がある。
安全面に関しては、歩行者検知機能付きの自動緊急ブレーキや、周囲の走行車を検知して配光を自動で最適化するヘッドライトなど、最新の技術が取り入れられている。
高めに設定された座席からの視界は、前方・斜め後方ともに良好で車体の動きをつかみやすい。これなら狭い道でも不安なく入っていくことができるだろう。
通常走行では、駆動力は前輪に50%、後輪に50%の割合で配分されるが、高速巡航などでは前輪に100%配分され、燃費の向上に貢献する。前輪がスリップした時など瞬時(0.3秒以内)に後輪にも駆動力を配分し、安定した走行を確保する。
2Lエンジンはガソリン仕様とディーゼル仕様から選べる。どちらも完成度は高く、ディーゼル車は9種、ガソリン車は15 種という幅広い選択肢も魅力である。
全長× 全幅× 全高:4410×1900×1650mm
ホイールベース:2680mm
車両重量:1920kg
エンジン/排気量:直列4気筒DOHCディーゼルターボ/1999cc
最高出力:180PS/4000rpm
最大トルク:43.9㎏-m/1750〜2750rpm
駆動方式:フルタイム4輪駆動
燃料消費率:14.9km/L(JC08モード)
使用燃料:軽油 55L
ミッション:9速自動変速機
サスペンション:前:ストラット 後:インテグラルリンク
ブレーキ形式:前・後:ベンチレーテッドディスク
乗車定員:5名
車両価格:車両価格620万円(消費税込み)
問い合わせ:ジャガーコール 0120・050・689
文/石川真禧照(自動車生活探険家)
撮影/佐藤靖彦
※この記事は『サライ』本誌2018年10月号より転載しました。