
ライターI(以下I):『豊臣兄弟!』の織田信長(演・小栗旬)と妹のお市(演・宮崎あおい)兄妹を演じている小栗旬さんと宮崎あおいさんは、ともに大河ドラマの主演経験者です。宮崎あおいさんが2008年の『篤姫』で女性演者としては、史上最年少で主役の篤姫を演じました。小栗さんも2022年の『鎌倉殿の13人』で北条義時役で主役を演じました。
編集者A(以下A):そのおふたりが『豊臣兄弟!』では、兄と妹として登場しているわけです。大河ドラマのオールドファンとしては、これほど感無量なことはありません。
I:そのおふたりからコメントが寄せられました。まずは、小栗旬さんのお話をどうぞ。最初に織田信長について語ってくれました。
僕が初めて見た信長役は、大河ドラマ『秀吉』の渡哲也さん。すごく怖くて、そのイメージが強烈に残っています。今回は具体的にキャラクターを固めず、脚本に描かれている信長を演じることを心がけています。『豊臣兄弟!』の信長は、非常に合理的で先進的な考えを持った人。しかし、その考えは周囲になかなか理解されず、「誰も自分のことを分かってくれない」という悲しみを心の奥に抱いています。その上、「信長としてこうあらねばならない」と自分で自分を縛ってしまうので、本来の自分とかい離するふるまいをしてしまう瞬間がたくさんあるなと感じます。僕もキャリアを重ねて、現場では後輩たちの前でちゃんとしようとしていますが、本当の自分とはやっぱりギャップもあって。そこは、信長にシンパシーを感じる部分ですね。
I:大河ドラマ『秀吉』は1996年の作品です。当時小栗さんは中学二年生でこの作品に出演しています。大河ドラマ『秀吉』で渡哲也さんと同じ空間で演技をした経験が、得難いものとして血肉になっているんでしょうね。『秀吉』で主役を演じたのは竹中直人さんですが、『豊臣兄弟!』で松永弾正久秀役で登場することになっています。このことについても小栗さんは語ってくれました。
今後、松永久秀を演じる竹中直人さんとのシーンがありますが、面と向かってお芝居するのは大河ドラマ『秀吉』以来、約30年ぶりでした。撮影現場で段取りをつけていたとき、信長よりも小栗旬としての気持ちが先にあふれ出てしまって。あのとき秀吉だった竹中さんとまた一緒にお芝居できたことが感慨深かったです。
A:『秀吉』で小栗旬さんが演じたのは、石田三成の少年時代の石田佐吉です。秀吉にお茶を振る舞う有名なシーンが懐かしく思い出されます。あれから30年の時を経ました。NHKオンデマンドで再視聴しましたが、なんだか、涙腺がゆるみますね。実は、2022年の『鎌倉殿の13人』の取材会の際に、大河ドラマの座長の役割という話題になったことがあります。当時、源頼家役の金子大地さんや畠山重忠役の中川大志さんが口々に「小栗さんのサポートがありがたかった」ということを話していました。もしかしたら、小栗さんも若いころに当時のベテラン俳優にサポートされていたのかという質問に対する小栗さんの答えです。
中二の時に『秀吉』(96年)で石田三成の子供時代を演じました。秀吉役の竹中直人さんがめちゃめちゃよくしてくれたんです。そんなに出番がたくさんあったわけではないのですが、声をかけてくださったり、気にかけていただいたりしました。こんな自分にもこんなにもよくしてくれたという実体験が自分の中で骨になっていった。何年か経ってから竹中さんに挨拶した際に「でかくなったな」と言ってくれたのも嬉しかったですね。
A:こういうことですから、私の中では、松永弾正久秀と信長のやり取りは、ハンカチ必須の回になると予測しているのです。あれから30年。来し方を振り返ると、いろいろなことがありました。竹中直人さんも小栗旬さんも俳優の世界でお元気で、こうしてふたたび大河ドラマの舞台で相まみえる。こんないい話があるでしょうか。
I:信長と松永弾正の回は、事前に告知してほしいですね。『土スタ』などで、30年前のシーンも放映してほしいですね。
18年ぶりの大河ドラマ出演が「お市」
I:宮崎あおいさんといえば、2008年の『篤姫』で篤姫を演じました。
A:2008年といえば、北京五輪が開催された年で、福田康夫首相から麻生太郎首相に交代した年です。翌2009年に自民党から民主党に政権交代がなされたという時代でした。当時の宮崎さんは22歳。女性の主人公としては最年少で1年間主役を張って、視聴率も平均24.5%と、盛り上がりを見せましたね。私が印象に残っているのは、物語の終盤になりますが、堀北真希さん演じる和宮とのやり取りです。
I:あれからもう18年経過したんですね。キリっとした篤姫が印象に残っていますが、宮崎あおいさんは18年ぶりの大河ドラマ出演についてこう語っています。
本当に感慨深いです。『篤姫』で積み重ねた日々は私の一生の宝物。大河ドラマの主演はとても大きな経験で、もう篤姫を演じられないと思うととてもさびしくて。今でも『篤姫』の話をすると、涙が出てきてしまうんです。(小一郎役の)仲野太賀さんも、クランクアップするときは絶対泣くと思います(笑)。『豊臣兄弟!』の撮影に入る前は、18年ぶりに大河ドラマに参加するという実感があまりなかったのですが、いざ始まってみると、もっともっと皆さんと関わりたいと思いました。
A:今でも篤姫を思うと涙が出てくるとは、当時ドラマを熱心に視聴していた立場からも嬉しいことですね。そして、宮崎さんはお市についてこう語っています。
すべてが命がけの戦国時代においても、特に芯の強い女性だと感じています。私の中では、市はキリッとしているイメージがあったので、メイクの力も借りながら、スッとした品のある女性に見えるように意識しています。シーンを重ねるごとに、自分の中に確実に市が育っていることがわかるので、日々の撮影が楽しいです。今後、市は信長のために浅井長政(演・中島歩)に嫁ぎます。自分の置かれた状況を受け入れて、前を向けるなんてすてきですよね。自由な選択ができない中でも、自分の幸せを見つけるのが上手だった人ではないかなと想像しています。
I:「芯の強い」というのは、お市の方の3人の娘たち、茶々、初、江に受け継がれたんでしょうね。そんな感じがします。宮崎さんのお話は、信長についても触れています。
織田信長を演じる小栗旬さんは、子どものころから知っているので安心感があります。最初は市として信長と向き合うと緊張しましたが、撮影を重ねていくうちに自然と兄妹としていられるようになりました。小栗さん演じる信長はやっぱりかっこいいですね。市が兄のために生きる覚悟を持っているということをしっかり見せるために、小栗さんのお芝居をしっかりと受け止めて演じることを心がけています。
I:実は、小栗旬さんもお市について語っています。どうぞ。
市と信長の関係も見どころのひとつです。市といるときの信長は、ふだんよりもリラックスした状態でいられているので、そこは意識して演じています。宮崎さんは繊細に市を作りあげられていて、ひとつひとつの演技が心にしっかり届くので、一緒にお芝居をしていて楽しいです。今作の信長には、市の人生だけは守りたいという思いが強くあるので、ふたりの今後にも注目していただけたらと思います。
A:信長にとって大切な存在であるお市は、この後、浅井長政に嫁ぎます。信長は浅井長政を義弟として、心の底から信頼していたともいわれています。ですから浅井長政の「裏切り」に接した際の怒りは、怒髪天を衝いたともいわれています。
I:浅井長政の裏切りが、お市の方の人生を流転させるきっかけになったのですよね。
A:お市の方の人生を流転させただけでなく、お市の方の娘たちを通じて、豊臣家の存亡にも大きな影響を与えることになります。
I:その歴史的な物語を『豊臣兄弟!』はどのように描いてくるのでしょうか。
A:大河ドラマ主演経験者をキャスティングしているわけですから、「こうきたか!」とうならせてほしいですね。

※宮崎あおいの「崎」は正しくは「たつさき」。
●編集者A:書籍編集者。かつて編集した『完本 信長全史』(「ビジュアル版逆説の日本史」)を編集した際に、信長関連の史跡を徹底取材。本業では、11月10日刊行の『後世に伝えたい歴史と文化 鶴岡八幡宮宮司の鎌倉案内』を担当。
●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。猫が好き。愛知県出身なので『豊臣兄弟!』を楽しみにしている。神職資格を持っている。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり











