文/鈴木拓也

「錠剤が飲みづらい」、「唾液を飲み込むときにせき込むことがある」、「しゃべっていると人に何度も聞き返される」など、口に関係した不調が気になっていないだろうか?

こうした不調は、一見ささいなことに思えるが、「危険な老化のサイン」だと指摘するのは、東京都健康長寿医療センターの歯科口腔外科部長を務める、平野浩彦医師。

老年歯科学を専門とする平野医師は、著書の『フレイルの専門医が教える 舌を鍛えると長生きできる!』(PHPエディターズ・グループ)のなかで、上記のような不調を「オーラルフレイル」と呼んでいる。

平野医師によれば、オーラルフレイルの人は、そうでない人に比べて、「身体的フレイルになる人が2.4倍、筋肉量や筋力が低下するサルコペニアは2.1倍、要介護認定になる人も2.4倍で、総死亡リスクも2.1倍」になるという。

そもそもフレイルとは、「高齢期になり、心身の機能や活力が衰え、虚弱になった状態」を意味し、国内に少なくとも250万人はいるとみられている。

フレイルが本当にこわいのは、風邪や転倒などちょっとしたトラブルがきっかけで、寝たきりへと移行するリスクがあること。そして、平野医師は、オーラルフレイル(口の虚弱)は、全身的なフレイルの始まりであると警告する。

同時に、オーラルフレイルは「改善できる」とも本書で説かれており、そのための様々なメソッド―衰えた舌を鍛えるのがメインで「舌トレ」と呼んでいる―が掲載されている。

今回は、舌トレの中から、簡単ですぐできる方法を2つ紹介しよう。

■「あー」「んー」体操(舌筋・咬筋、側頭筋を鍛える)

1. ゆっくり大きく口を開けて「あー」と声を出す。

2. しっかり口を閉じて口の両側に力を入れながら舌を上あごに押しつけるようにして奥歯を噛みしめ、「んー」と声を出す。

■舌のコロコロあめ玉(舌筋・口輪筋などを鍛える)

1. 舌を左の頬の内側に強くしっかり押し付ける。

2. 自分の指でクチの中の舌先を頬の上から押さえる。

3. それに抵抗するように、舌の頬の内側にゆっくり10回押しつける。

本書では舌トレのほかに、典型的な早口言葉を難易度を上げながらしゃべる、一定のルールにしたがいガムを噛む、1日10種類の食品を食べるなどのトレーニングもあり、やれることから随時実行に移すことで、オーラルフレイルの改善がはかれるようになっている。

平野医師は、「これからの時代は『100歳まで生きる』のがあたりまえ」になると予測。元気に長寿をまっとうするには、舌や口のケアも大事だと力説している。どのセルフケアも容易なので、人生100歳時代を見据えて習慣づけておくとよいだろう。

画像提供/株式会社PHPエディターズ・グループ

【今日の健康に良い1冊】
『フレイルの専門医が教える 舌を鍛えると長生きできる!』

https://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-84087-1

(平野浩彦著、本体1,200円+税、PHPエディターズ・グループ)

文/鈴木拓也
老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は散歩で、関西の神社仏閣を巡り歩いたり、南国の海辺をひたすら散策するなど、方々に出没している。

 

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