文/堀けいこ
落ち込んだり、悲しいことに出会ったりしたとき、映画や音楽に接することで、気持ちが前向きになった経験はないだろうか。滅入るような出来事を多く見聞きする今日この頃、だからこそ、素敵なニュースをお知らせしよう。
半世紀以上にわたって数々の名曲を私たちに届けてくれている映画音楽の巨匠ミシェル・ルグランが来日、7月6日から4夜連続で東京・青山のブルーノート東京のステージに登場する。
今年は、1988年11月のスタート以来、世界各国のミュージシャンを迎え、日本の音楽ファンのためにたくさんのステージを企画してきたブルーノート東京にとって、30周年をという記念すべき年。そのアニバーサリー企画「blue note Tokyo 30th anniversary presents」のひとつのとして、ミシェル・ルグランのステージが実現した。
誰もがその名を知るミシェル・ルグランだが、あらためて、そのプロフィールを紹介しておこう。
フランスを代表する指揮者/作曲家であるレイモン・ルグランを父に、楽譜出版社を経営するマルセルを母に、1932年、パリで生まれたミシェル・ルグラン。2歳年上の姉クリスチャンヌ・ルグランは、一世を風靡したジャズ・コーラス・グループ、スウィングル・シンガーズ結成当時のリード・ソプラノだった。
そんな音楽一家の中で幼少時代を過ごしてきたミシェルは、11歳でパリの国立音楽学院に入学。本格的に音楽を学び優秀な成績をおさめる一方で、10代の半ばには父の手伝いで映画音楽に携わっていたという。
そして、フランソワーズ・アルヌール主演のフランス映画『過去をもつ愛情』(1954年)を振り出しに、本格的に映画音楽を書き始める。その才能は見事に花開き、ジャック・ドゥミ監督のミュージカル映画『シェルブールの雨傘』(1964年)の大ヒットとともに、楽曲作者ミシェル・ルグランの名は世界的なものとなった。
その後も、『ロシュフォールの恋人たち』(1967年)、『華麗なる賭け』(1968年)、『思い出の夏』(1970年)をはじめ数え切れないほどの名作映画の音楽を担当した。その一方で、若かりしころに自己のグループを率いてパリのジャズ・クラブで展開していた熱演が話題となり、ピアノ・トリオや楽団名義のレコードも発表。マイルス・デイヴィスやビル・エヴァンスとも親交を結んで録音を残すが、なかでも1958年のリーダー・アルバム『ルグラン・ジャズ』は、歴史的な名盤として知られている。
そんなミシェル・ルグランだが、今回のブルーノート東京への登場は5年ぶりとなる。前回のルグランのライブを体験しているブルーノート東京の広報の原澤美穂さんは、そのときの驚きを、こう語っている。
「日本でも『ロシュフォールの恋人たち』のオープニングで流れる「キャラヴァンの到着」がたびたびCMに使用されるなど、エレガントで、人生の喜びと切なさに溢れた彼の音楽は多くの人々を魅了してきましたが、初めてルグランさんの演奏を目の当たりにして衝撃を受けたのは、なんと言っても彼のピアノ演奏。そのタッチとサウンドはパワフルで鋭く、かつ好奇心いっぱいの子供のようでみずみずしく……。私は彼の音楽について何も知らなかったのだと思ったほどです」
今年2月に86歳の誕生日を迎えたミシェル・ルグランだが、今なお精力的に活動。最近では、一昨年大ヒットした映画『ラ・ラ・ランド』の監督デイミアン・チャゼルが『シェルブールの雨傘』などのミシェル・ルグランと監督のジャック・ドゥミとのコラボレーション作品に大きな影響を受けたと語ったことで、改めてルグランの音楽作品に触れる若い世代が増えている。
今回のブルーノート東京のステージには、ベースのジェフ・ガスコイン、ドラムスのセバスティアン・デ・クロムを率いた、ミシェル・ルグラン・トリオで登場。客席には、映画史に残る名画のシーンを懐かしく思い浮かべるファンだけでなく、世代を超えて幅広い層のオーディエンスが集まるにちがいない。
いつまでも色褪せないミシェル・ルグランの素晴らしき音楽世界に、時を忘れて浸りたい。
【スケジュール】
2018年7月6日(金)、7日(土)、8日(日)、9日(月)
時間、料金などの詳細は
http://www.bluenote.co.jp/jp/artists/michel-legrand/
【会場】
ブルーノート東京
東京都港区南青山6-3-16
ご予約/お問合せ 電話:03-5485-0088
※6月22日まで、2018年9月以降のブルーノート東京ライブチケット5組10名が当たるミシェル・ルグラン公演キャンペーンを実施中。くわしくは、こちら。
http://www.bluenote.co.jp/jp/event/michellegrand/
文/堀けいこ