取材・文/池田充枝
1973年、朝日新聞社の創業者である村山龍平(1850-1933)が遺した重要文化財19点をはじめとするコレクションの維持保存と研究を目的に、神戸・御影の村山家住宅の一角に展示施設として「香雪美術館」が開かれました。香雪(こうせつ)とは、村山龍平の号です。
その開館45周年を記念して、村山コレクションを軸に優れた美術品を展示する新たな美術館「中之島香雪美術館」が、大阪屈指のビジネスセンターである中之島エリアに開かれました。同館ではオープン記念展として《珠玉の村山コレクション~愛し、守り、伝えた~》が開かれています(~2019年2月11日まで)。I期~V期にわたって、日本と東アジアの美術品約300点を各期のテーマにそって展観します。
本展の見どころを、中之島香雪美術館館長の臼倉恒介さんにうかがいました。
「中之島香雪美術館は3月21日に開館したばかりの新しい美術館です。神戸市にある香雪美術館の分館にあたり、朝日新聞社の創業者・村山龍平の収集した日本の古い美術品を所蔵しています。大阪のビジネス街の超高層ビルに、市中の山居をテーマとする都心型美術館を実現しました。
開館1年目は、村山コレクションの中から選りすぐりの約300点を5期に分けて紹介いたします。I期目「美術を愛して」では、新聞人にして美術の庇護者であった村山とゆかりの深い作品を中心に展示します。美濃「志野茶碗 銘 朝日影」は、特に村山の愛着が深い茶碗です。日の丸のような模様を村山が朝日新聞の社旗に見立て、「新千載和歌集」所蔵の和歌から銘を付けたと伝わります。
曾我蕭白の「鷹図」は、細密な描写の傑作です。鷹の鱗のような羽根と、柔らかい羽毛を墨で描き分け、ドングリの実と葉、咲き乱れる秋草が細部まで浮かび上ります。鷹とウズラの対比にとぼけたユーモアも感じられます。
II~V期は、金、茶の湯、仏教美術、物語とうた、といったテーマで展示します。重要文化財19点を含む村山コレクションの全容を知る絶好の機会です。
また、常設展示として、神戸の本館にある旧村山家住宅(重要文化財)の茶室「玄庵」を一棟丸ごと再現した「中之島玄庵」もご覧いただけます」
大阪きってのビジネス街に出現した「和」空間で、日本美術の名品を鑑賞できます。英気を養いに、ぜひ足をお運びください。
【開催要項】
中之島香雪美術館開館記念展「珠玉の村山コレクション~愛し、守り、伝えた~」
会期:I期2018年3月21日(水・祝)~4月22日(日)、II期:4月28日(土)~6月24日(日)、III期:7月7日(土)~9月2日(日)、IV期:10月6日(土)~12月2日(日)、V期:12月15日(土)~2019年2月11日(月・祝)
会場:中之島香雪美術館
住所:大阪市北区中之島3-2-4 中之島フェスティバルタワー・ウエスト4階
電話番号:06・6210・3766
開館時間:10時より17時まで(入館は16時30分まで)
休館日:月曜(祝日の場合は開館し翌火曜日休館)
http://www.kosetsu-museum.or.jp/nakanoshima/
取材・文/池田充枝