旨い日本酒を自宅で楽しもうと思ったら、旨い「つまみ」を合わせたいもの。それも、日本酒のタイプにあわせたものを用意したい。
日本酒に造詣の深い料理家の稲垣知子さんに、自宅で簡単に作れる酒つまみ6品をご紹介いただこう。
「『而今』(三重)や『鍋島』(佐賀)といった、甘みと香りが美しく立つ、モダンな日本酒には、オリーブオイルや生ハム、あるいはアーモンドのような香ばしい食材もよく合いますよ」と、日本酒に造詣の深い料理家の稲垣知子さんはいう。甘みや香りがきっちりある分、食材の強さを受け止め、高め合うというのだ。
たとえばこんなつまみがオススメだ。
■1:茄子とトマトの重ね焼き
【材料】
茄子 1本
プチトマト 4個
生ハム 1枚
スライスチーズ 1枚
黒くろ胡こし椒よう 少々
塩 適量
オリーブオイル 適量
【作り方】
茄子は5mm程度の厚さに切り、3%の塩水に10分ほど浸ける。軽く押して水を絞り、両面にオリーブオイルを塗る。プチトマトは3㎜程度の厚さに、生ハムは5cm角程度に切る。
オーブンペーパーの上に茄子を置き、上に生ハム1片と、プチトマトのスライス数枚をのせ、もう一枚の茄子で挟む。3~4組作り、トースターか魚焼きグリルの中火にかける。
茄子の表面がほんのり色づいたら、あらかじめ4等分しておいたスライスチーズを上にのせ、もう一度火にかけ、チーズがとろけたら取り出し、プチトマトを数枚飾る。
器に並べて、上から黒胡椒を適量かける。「オリーブオイルはフレッシュな酒の香りと好相性。また茄子とトマトのみずみずしさもジューシーな酒とよく合います」(稲垣さん)
■2:生牡蠣のアーモンド風味揚げ
【材料】
生牡蠣(むき身で小粒なもの) 150g
米粉 1/3カップ
塩漬けグリーンオリーブ 5粒
アーモンドスライス 1/4カップ
水 1/3カップ
ライム 1/2個
サラダ油 適量
【作り方】
米粉、種を除いてみじん切りにしたグリーンオリーブ、こまかく砕いたアーモンドスライスをボウルに入れる。水洗いし、よく水気を切った牡蠣も入れる。
水1/3カップを入れ、粉っぽさがなくなるまで混ぜ、牡蠣と絡めるようにしながら揚げ衣にする。最初に牡蠣の水気をよく払っていないと衣がゆるくなってしまうので注意。
フライパンに油を1cmくらいの深さになるように入れ、中火にかける。油が熱くなったら衣を絡めた牡蠣を入れ、そのまま中火で両面カリッと揚げ焼きにする。
盛りつけたら塩を軽く振る。ライムがなければレモンに替えてもよいし、柚子だとまたニュアンスが変わる。柑橘類の酸は、モダンな酒の持つ美しい酸に通じるのだ。
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発泡感のある酒に合わせたいつまみもある。
「『風の森』(奈良)のように、自然な発泡感を持つ生原酒タイプの酒が増えてきています。こういう爽やかだが奥底に力強いコクをも秘めるタイプの酒には、旨みが強い食材を用い、生原酒のコクで旨みに対峙しましょう。」と稲垣さん。発泡感で爽やかにまとめれば、限りなく杯に手が伸びる。
■3:アボカドの胡麻和え
【材料】
アボカド 1個
柚子の搾り汁 小さじ1
いり胡麻 大さじ1/2
おろしにんにく 1/8片分
胡麻油 小さじ1/2
塩 ひとつまみ
【作り方】
アボカドは皮を剥むき、ふたつ割りにしながら種を外す。まな板の上で、さいの目に切り、ボウルに入れる。
さらに分量の柚子の搾り汁、いり胡麻、おろしにんにく、胡麻油と塩ひとつまみを入れ、ざっと混ぜ合わせる。
皿に盛り付け、好みで柚子の皮の細切りをのせる。アボカドの旨みと、胡麻油の風味、柚子にある柑橘の酸と渋み。自然な発泡感を持つ酒とニュアンスが通じ、好相性も道理である。
■4:茸のみぞれ煮
【材料】
生しいたけ 3枚
まいたけ 50g
なめこ 1パック
しめじ 50g
昆布 3g程度
水 大さじ1
黒酢 大さじ1
醤油 大さじ1
酒 大さじ1
おろし大根 150g
【作り方】
しいたけは石づきを取り、裏返して、軸をはずして傘の裏にのせ、適度にちぎったまいたけといっしょにトースターに入れ、しいたけの傘の裏に水滴がにじみ出る程度に5~6分焼いて細切りにする。
なめこは水洗いしてざるで水を切る。しめじは石づきを取りほぐす。鍋に分量の昆布、水、黒酢、醤油、酒を入れ、蓋をして弱火で10分ほど煮たら、上のしいたけとまいたけ、そして水気を軽く絞ったおろし大根を入れ、中火でさっとひと煮立ちさせる。長く煮すぎて大根の食感や風味を損なわないよう注意すること。
皿に盛り、好みで柚子胡椒を脇に添える。茸から湧き出した出汁の濃い旨みに、酒のボディが揃う。また、酒にある爽やかな苦みと大根おろしも実に合う。
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しっかりとした味の酒に合わせるつまみはどうだろう。
「『義侠』(愛知)や『悦凱陣』(香川)のように、旨みとコクが存分にあるしっかりとした味の酒や、熟成させて味の乗った酒には、合わせる肴さかなにもその強さを受け止める体幹が必要です」と稲垣さん。首尾よく揃えば、こよなき口福が訪れる。
たとえばこんなつまみだ。
■5:蛸と長芋の花山椒炒め
【材料】
長芋 100g
ボイル真蛸 100g
胡麻油 大さじ1
花山椒 大さじ1
にんにく 1/2片
赤唐辛子 1本
醤油 小さじ1
あさつき 適量
【作り方】
長芋はガス火で軽く炙ってひげ根を焼き切り、たわしでざっとこすり洗いする。蛸は1cm弱の厚さにそぎ切り、長芋は蛸と同じくらいの厚さのいちょう切りにする。
フライパンに分量の胡麻油、花山椒、つぶしたにんにく、種を取った赤唐辛子を入れ、弱めの中火にかける。鍋が熱くなったら上の長芋を入れ、長芋が軽く色づくまで中火で炒め、強火にして蛸を入れ、手早く醤油小さじ1を鍋肌から垂らし、一気に炒め合わせる。蛸から水分が出ないうちに火を止める。
皿に盛り付け、上から刻んだあさつきを散らす。あさつきがなければわけぎや万能葱ねぎでもよい。火を入れた長芋の旨みと、蛸の香り、花山椒の辛み。それがしっかりした酒に合うのだ。
■6:マッシュルームとジャガイモのカレー風味グラタン
【材料】
ジャガイモ(男爵) 中1個
マッシュルーム 2個
ベーコン 1枚
生クリーム 100cc
味噌 小さじ1
カレー粉 小さじ1/4
おろしにんにく 1/8片分
塩 ひとつまみ
【作り方】
ジャガイモは皮を剥き、芽取りして、薄めのいちょう切りにする。マッシュルームは薄くスライス、ベーコンは千切りにする。
ボウルに分量の生クリーム、味噌、カレー粉、おろしにんにくと塩ひとつまみを入れよく混ぜる。上のジャガイモ、マッシュルーム、ベーコンを入れ、食材がくっつき合わないように注意しながらさらに混ぜる。
耐熱皿に入れ、ホイルをかぶせて、トースターなら1000W、オーブンなら200度で約20分焼く。一度取り出し、ホイルを外し、さらに5分ほど焼いて焼き目をつける。
好みで黒胡椒を適量散らす。クリームと日本酒の相性は、実はとてもよい。また、味噌のコクや、カレーの香りは、味の濃い酒や、熟成酒の持つ複雑な味と香りのニュアンスに通じる。
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以上、自宅で簡単に作れる酒つまみ6品をご紹介した。酒のタイプにあわせたつまみを用意して、その酒が持つ真の実力を感じていただきたい。
※この記事は『サライ』本誌2017年1月号より転載しました。(料理/稲垣知子 撮影/浜村多恵)