取材・文/池田充枝
16世紀末から17世紀初頭にかけて、プラハに宮廷を構え、神聖ローマ帝国皇帝として君臨したハプスブルク家のルドルフ2世(1552-1612)は、稀代の収集家として、また芸術の庇護者として知られます。
彼の宮廷には世界各地から優れた人材が集結し、芸術作品あるいは科学機器などの優秀な創作物、新たに発見された珍奇な自然物が集められました。文字通り「驚異の部屋」とでも呼ぶべき膨大なコレクションが形成され、当時のヨーロッパの芸術文化の一大拠点となりました。
宮廷画家らに描かせた作品からは、彼が人間の性愛、天文学や錬金術、博物学に関心を寄せその研究に没頭したことが分かります。
そんな“綺想の皇帝”ルドルフ2世の世界を覗く展覧会が、福岡市博物館で開かれています(〜2017年12月24日まで)。ジュゼッペ・アルチンボルドをはじめ、ルドルフ2世が愛好した芸術家たちの作品を中心に、占星術や錬金術にも強い関心を示した皇帝のもとで花開いた美しくも妖しい世界を紹介します。
見どころを、福岡市博物館の学芸員、髙山英朗さんにうかがいました。
「見どころとして3点の作品をご紹介します。
まず1点目は、ジュゼッペ・アルチンボルドが、四季を司る神の姿でルドルフ2世を描いた《ウェルトゥムヌスとしての皇帝ルドルフ2世像》です。アルチンボルドは、フェルディナンド1世、マクシミリアン2世、ルドルフ2世の3人の皇帝に仕えた宮廷画家で、動物や植物などを組み合わせて描いた特異な寓意像でよく知られていますが、彼の代表作がこの作品です。
次に2点目は、ルーラント・サーフェリーが描いた《動物に音楽を奏でるオルフェウス》です。ルドルフ2世は動物園を所有し、生きた動物を収集していました。この作品にはライオンにダチョウ、コンゴウインコなど多種多様な動物が描き込まれています。宮廷画家だったサーフェリーが見たであろう、ルドルフ2世の動物園の様子が想像されます。
最後に3点目は、《陶製の花瓶に生けられた小さな花束》です。この作品を描いたヤン・ブリューゲル(父)は、ルドルフ2世が敬愛したピーテル・ブリューゲルの次男で、花の静物画の名手として知られています。彼が描いた豪華絢爛な花卉画には、色とりどりの花だけでなく、そこに宿る様々な昆虫も細かに描き込まれています。
上記の作品以外にも、ルドルフ2世が愛した芸術家たちの作品や、当時の最先端技術で作られた工芸品や天文学関係の作品なども展示し、ルドルフ2世の「驚異の部屋」に迫ります」
圧倒的迫力の目眩くような「皇帝の驚異の部屋」は、果たしてどんな様相をしているのか、客人となって覗いてみませんか。
【開催要項】
『神聖ローマ帝国皇帝 ルドルフ2世の驚異の世界展』
■会期:2017年11月3日(金・祝)~12月24日(日)
■会場:福岡市博物館 2階 特別展示室
■住所:福岡市早良区百道浜3-1-1
■電話番号:092・845・5011
■ウェブサイト:http://rudolfukuoka.com/
■開館時間:9時30分から17時30分まで(入館は17時まで)
■休館日:月曜
取材・文/池田充枝