肉食への禁忌が強かった江戸時代ですが、鳥肉には比較的寛容だったようです。その証拠に、寛永20年(1643)刊行の『料理物語』には白鳥や鴨、雉子、鶉など18種類の野鳥を使った料理が紹介されています。
現在、食用の鳥肉といえば鶏が一般的ですが、江戸時代は野鳥が食用とされていて、鶏はほとんど食べられていませんでした。古来より、鶏は“太陽を呼び、朝を告げる鳥”として神聖視されていたためです。鶏は愛玩具、あるいは戦わせて縁起を占う闘鶏用として飼われていました。しかしながら、江戸後期、野鳥が乱獲されて減少すると鶏も食されるようになったそうです。
さて、今回は、天明2年(1782)に刊行され、150品余りの米飯料理を掲載している料理書『名飯部類』から「ことり雑炊」のレシピをご紹介します。本来は、鶉(うずら)などの小鳥を骨ごと叩いてミンチにして肉団子を作りますが、手に入らなかったので鴨肉で代用しました。
ちなみに、鶉は諸大名が好んで飼育したそうです。こちらも食用や採卵用ではなく、美声を楽しむための愛玩具としてでした。
「ことり雑炊」の材料(2人前)は下記の通りです。
肉団子(鴨肉) | 200g |
味噌汁 | 400cc |
米 | 1合 |
セリの茎 | 適量 |
まず味噌汁で米を煮ます。
米が柔らかくなったら肉団子を入れて火を通します。
火が通ったらお椀に盛り、刻んだセリの茎をのせて完成!
濃厚な肉の旨みとふくよかな脂の甘みが特徴的な鴨肉は、味噌と相性抜群です! 鴨もそうですが野鳥は独特の臭みが気になりがちですが、薬味として香りの強いセリを入れたことで、臭みも気にならなくなります。
今回は、あえて鶏肉ではなく身近な野鳥である鴨で作りましたが、鶏で作っても美味しくいただけます。ぜひ、お好みの鳥肉でお試しあれ。
【参考文献】
『名飯部類 原本現代訳』(原著・杉野権兵衛 訳・福田浩、島崎とみ子/教育社新書)
『図説 江戸時代 食生活事典』(編集・日本風俗史学会 編集代表・篠田統、川上行蔵/雄山閣)
『江戸の料理と食生活』(編 原田信男/小学館)
※分量や細かい作り方は原本に記載されていないため、筆者が作った方法でご紹介しています。
文/小野寺佑子
撮影/五十嵐美弥