文/鳥居美砂

沖縄県では“戦前から導入され、伝統的に食されてきた地域固有の野菜”を「伝統的農産物」と定義しています。「島野菜」とも呼び、こっちの名前のほうが馴染みがあるかもしれませんね。今が盛りの「島らっきょう」も、この島野菜のひとつです。

島らっきょうはユリ科の根菜類に区分され、一般的ならっきょうに比べて小ぶりで、香りと強い辛味が特徴。エシャロットに近い風味があります。

島らっきょうの旬は春先から初夏にかけて。那覇の牧志公設市場にも、島らっきょうが出回っています。

かつお節をふりかけた島らっきょうの浅漬けは、居酒屋の定番メニューです。ピリッとした辛味が、泡盛によく合います。天麩羅にするとその辛味が和らぎ、こちらも美味しくいただけます。

この浅漬けと天麩羅のほか、チャンプルーもおすすめですが、沖縄の郷土料理店でも献立にあるところは案外少ないようです。

今回は、旬の島らっきょうを使ったチャンプルーの作り方を紹介します。教えてくださるのは松本料理学院、学院長の松本嘉代子さんです。

■島らっきょうを使ったチャンプルーの作り方

「季節の野菜と豆腐を炒めた料理法をチャンプルーといいます。最後に卵でとじるかは、使う野菜によって違ってきます。キャベツやからし菜、もやしなどは卵でとじません。ゴーヤーと島らっきょうは苦味や辛味があるので、卵を使って味をマイルドにするのです」(松本先生)

からし菜は一度塩漬けした漬物「チキナー」を塩抜きしてから使います。チャンプルーについては、第1回「キャベツを使ったタマナーチャンプルーの作り方」で詳しく紹介しているので参考にしてください。

【材料(2~3人分)】
島らっきょう/150g(正味)
豆腐/150g
卵/1個
油/大さじ1.5
塩/少々
かつお節/適量

【作り方】

(1)島らっきょうは外側の汚れた薄い皮を取って洗い、根元と茎に分けておく。

(2)繊維に沿ってせん切りにし、小さじ1/2程度の塩(分量外)を振っておく。

(3)鍋に油(分量の2/3程度)を熱し、豆腐を手でちぎって水気をふき取り、表面がきつね色になるまで焼き目をつけ、皿に取る。

(4)(3)の鍋に残りの油を足し、島らっきょうを炒める。豆腐を加えて塩で味を整え、かつお節を入れる。

(5)最後に、溶きほぐした卵を流し入れて全体にからませ仕上げる。

(6)きつね色に焼いた豆腐と島らっきょうの風味が相まって、美味しいひと皿に。

以上、島らっきょうを使ったチャンプルーの作り方でした。

「薄塩にする際は早くから塩を振ってしまうと水が出るので、あまり時間をおかないでくださいね。塩については、もうひとつ注意点があります。沖縄の豆腐には塩味がついていますが、それ以外の豆腐で作るときは塩分が足りないかもしれません。味見をしてから量を加減してください」(松本先生)

油で炒めるのと卵を使うことで、島らっきょうの辛味は抑えられ、それでいてシャキシャキした歯触りはしっかり残っています。生食でのパリパリした食感や、天麩羅にしたときの根菜類ならではのほっこりした味わいとも違います。

沖縄旅行のお土産に、島らっきょうを買って帰る方も多いと思います。浅漬けで楽しむ方がほとんどでしょうが、ぜひチャンプルーも試してみてください。最近では、都心のスーパーで見かけることもあります。手に入らなければ、エシャロットでも代用できます。

せん切りにして炒めると、風味が一段とよくなり、作り方も簡単です。料理法を変えるだけで、新しい味覚に出会えます。

リサイズ松本先生Bパターン

松本嘉代子(まつもと・かよこ)  松本料理学院学院長。沖縄の食文化、琉球料理の保存・普及・継承に向けての県の検討会委員を務める。新聞、テレビ、講演会などでも活躍。『沖縄の行事料理』『おきなわの味』など著書多数。 松本料理学院のサイトはこちら

文/鳥居美砂
ライター・消費生活アドバイザー。『サライ』記者として25年以上、取材にあたる。12年余りにわたって東京〜沖縄を往来する暮らしを続け、2015年末本拠地を沖縄・那覇に移す。沖縄に関する著書に『沖縄時間 美ら島暮らしは、でーじ上等』(PHP研究所)がある。

 

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