文/鳥居美砂
首里の士族や上流家庭では、祝い事があると一の膳から三の膳に及ぶ「三献の料理」や、さらにオードブルのような東道盆(トゥンダーボン)などが加わった「五段料理」が用意されました。
これらは琉球王朝時代の宮廷料理の流れを組むもので、このもてなしのなかには現代でもおなじみになったラフテー、中身(豚肉の内臓)の吸い物、田いもを使ったドゥルワカシーといった料理もあります。
宴の締めとして、小ぶりのご飯が出されることもあります。それが「菜飯(セーファン)」です。ご飯の上に椎茸や人参、青菜、錦糸玉子などを彩りよく盛り、鰹だしをかけていただきます。目に美しく、さっぱりした味わいの首里の伝統料理です。
この菜飯を気軽に味わえるのが、『古都首里』です。ランチメニューの「首里御膳」(950円)では菜飯を中心に前菜三種、クーブ(昆布)イチリー、天婦羅が並びます。季節の島野菜をたっぷり使い、健康をも意識した献立です。
「奄美大島の郷土料理『鶏飯』はご存知の方も多いようですが、『菜飯』を知っている方は少ないかもしれませんね。鶏飯のだしは鶏ガラなどで取ったスープ、一方の菜飯は鰹だしです。5種類の具材をのせたご飯とともに、ポットに入れた鰹だしを一緒にお出ししますので、だしをかけて召し上がってください」
こう話すのは、『古都首里』店主の仲本玲子さんです。首里生まれの首里育ちで、地元の伝統料理と母親の味を受け継ぎ、約20 年にわたって東京・三軒茶屋で同名の沖縄料理店を営んでいました。その後、沖縄に戻り地元で店を再開しました。
現在はひとりで店を切り盛りされているので、来店の際には事前に電話を入れるとよいでしょう。
菜飯をはじめ、前菜やクーブイリチーの味付けは一般的な沖縄料理店よりも、すっきりした味わいに感じます。伝統的な琉球料理の定石通り、食材やだしの旨みを活かしながら、塩や醤油などの量を控えているからでしょうか。
天婦羅はゴーヤーやフーチバー(よもぎ)、島らっきょうといった季節の島野菜などを、味を付けた衣で揚げたもの。いわゆる、沖縄天婦羅です。南国の力強い島野菜の風味が楽しめます。
店はモノレールの首里駅の隣、儀保駅のすぐ近く。首里を散策する際には、足を伸ばしてみてはいかがでしょう。
【古都首里】
住所/沖縄県那覇市首里儀保町1−31−1F
電話/090-1402-4711
営業/11:30〜14:30(木・金・土曜のみ)
18:00〜22:00(ラストオーダー21:30)
休日/日・月曜
事前に電話で問い合わせて時間や人数、食事内容を相談するとよい。
http://kotoshuri.isp.okinawa.jp
文/鳥居美砂
ライター・消費生活アドバイザー。『サライ』記者として25年以上、取材にあたる。12年余りにわたって東京〜沖縄を往来する暮らしを続け、2015年末本拠地を沖縄・那覇に移す。沖縄に関する著書に『沖縄時間 美ら島暮らしは、でーじ上等』(PHP研究所)がある。