英語には、文字通りに読んでも意味がつかめない表現があります。直訳だと「なんのこと?」となるのに、実は日常でよく使われるフレーズだったりします。慣用句は、知っているかどうかで理解が大きく変わります。意味を知ると、ことばの背景やニュアンスが見えて、理解が広がっていくような面白さがありますね。

さて、今回ご紹介するのは “in hot water”です。

“in hot water”の意味は?

“in hot water” を直訳すると、

“in”は(〜の中に)、 “hot water” は(熱い水)ですが……、そこから転じて

正解は……
「困った状況にある」「トラブルに巻き込まれている」

という意味になります。

ミスをして困ったときや、ルールを破って人から怒られそうなときなどに使います。

『プログレッシブ英和中辞典』(小学館)には、「(…と)めんどうなことになって,ごたごたを起こして≪with≫.」と書かれています。

例えば、

“He forgot his wife’s birthday, so he’s in hot water.
(彼は奥さんの誕生日を忘れてしまって、今困ってるよ。)

“The students were in hot water after breaking the rules.”
(ルールを破った学生たちは怒られていた。)

“In hot water”は、カジュアルで、日常会話の中で使われる表現です。フォーマルやビジネスシーンではあまり使いません。

“Uh-oh… I’m in hot water!”
(うわ、大変! 困ったことになった!)

このように、ときに冗談ぽく、「困った!」と表現するような場面でも使うことができます。

英語と日本語の「困る」は違う?

日本語を学んでいるアメリカ人の友人が、日本語の「ちょっと困っていて……」という表現がおもしろい、と話してくれたことがあります。この表現は、すぐにお願いするわけではなく、助けを求める前の「予告」のように聞こえるそうです。つまり、「直接は言わないけれど、なんとなく助けてほしい」気配がある、と。

たしかに、英語では何か困っているとき、

“Can you help me?”
(手伝ってくれる?)

と直球でお願いするイメージがありますね。でも実際には、英語にも遠回しに助けを求める表現がたくさんあります。

ここでは、助けが必要なときに使える、英語の柔らかで控えめな表現をご紹介しましょう。

1. “Could you~” (直接的で丁寧な依頼)

まずは、もっとも基本的で丁寧な依頼の表現です。

Could you help me with this?”
(これを手伝ってもらえますか?)

なお、“Can you〜?” はよりカジュアルで、友人同士や気軽な場面でよく使われます。また、Would you 〜? はさらに丁寧で少しかしこまった言い方になります。

2. “It would be great if …”(少し遠回しな依頼)

直接言うのではなく、やんわりと助けを求める表現です。言葉の上では依頼していなくても、手を貸してほしい気持ちが伝わります。

It would be great if someone could help.”
(誰か手伝ってくれたらありがたいです。)

3. I wonder if 〜(やわらかな間接依頼)

そして三つ目は、相手に選択肢を残しながらお願いするやわらかな言い方です。相手への気遣いが感じられます。

I wonder if you could help me.”
(手伝っていただけますか。)

日本語話者にとって、このような丁寧な依頼の表現は、どこかしっくりくるように思います。ことばに、相手への配慮や距離感が含まれているからかもしれません。

最後に

アメリカの詩人、メアリー・オリバーは、毎日、森を歩くことで自然と向き合い、そこでの気づきを言葉へと結晶させていきました。彼女の詩の一部を引用します。

Someone I loved once gave me a box full of darkness.
It took me years to understand that this too, was a gift.

かつて愛した人は、私に「暗闇の箱」をくれた。
これも「贈りもの」だったと気づくまで、何年もかかった。

出典:Mary Oliver, “The Uses of Sorrow,” Thirst (Boston: Beacon Press, 2006).
訳:池上カノ

困ることは、できれば避けたいと思うものですね。けれど、困難があるからこそ、人はすこしずつ成熟していくのかもしれません。そう思うと、「困る」という経験そのものの見え方が、変わってくるように思えます。

“Looks like I’m in hot water again.”
(また困ったことになっちゃった。)

そんな言葉も、「またひとつ強くなれるチャンス」になると良いですね。

次回もお楽しみに!

●執筆/池上カノ

日々の暮らしやアートなどをトピックとして取り上げ、 対話やコンテンツに重点をおく英語学習を提案。『英語教室』主宰。  京都祇園にある建仁寺塔頭両足院をベースに、ひとつのテーマについて英語で語りあう『うごく哲学』を対面とオンラインで定期開催。その他、他言語を通して、それぞれが自分と出会っていく楽しさや喜びを体感できるワークショップやイベントを多数企画。
インスタグラム

●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com

 

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